7スタジアムの起源「スタジアム」という言葉の起源は古代ギリシャのオリンピアという町にあります。その昔、オリンピアでは192メートルの距離を走る競技が行われ、その長さの単位として用いられていた「スタジアム」が後に競技場を呼ぶ名称となったのです。オリンピアのスタジアムには盛り土による座席があり、町の高官用に石製の「VIP席」も用意されていました。古代ギリシャ、そして続く古代ローマの建築家たちは、多くの観客を集める会場のニーズを取り入れた舞台設計にたけていました。そうした古代の会場の構造が新手のスポーツ競技場のインスピレーションとなり、結果として生まれた「円形競技場」は現在でも多くの例を確認することができます。スタジアムでは半円型の二つのスペースが並置されて会場が構成され、外側の観覧スペースが内側の闘技場を取り囲む形になっていました。つまり、すり鉢状になったスタジアムの“スタンド”の構造が実現されていたのです。着工は紀元70年にまでさかのぼり、今日まで世界的に有名な競技場の一つであり続けているローマのコロッセウムは、すり鉢状のスタンドというコンセプトが見事に具現化された代表例。当時として秀逸な建造物であったばかりか、今日でも競技場として利用されており、オリジナルのデザインが変更されている箇所は驚くほど少ないのです。近代的なスタジアム設計しかしながら、スタジアムのコンセプトは、さまざまな競技事情を反映して古代ギリシャや古代ローマ時代からは著しく発展しています。過去20〜30年間だけでも、スタジアム建設プロジェクトへのアプローチには劇的な変化がありました。30年前は他のスポーツ(陸上競技など)との併用を目的として設計されたサッカースタジアムも多かったわけですが、今日ではサッカーの試合に特化した設計に重点が置かれています。例えば、かつては多くのスタジアムでピッチ外周に陸上競技用のトラックが設置されていましたが、臨場感が薄れてしまうため、良い試合会場の雰囲気が生み出されません。スタジアムは臨場感を最大限に高めるためにピッチを取り囲むようにスタンドが存在する構造になっているべきなのです。もちろん、選手、チームスタッフ、審判員、観客の安全が構造上軽視されてはなりません。本ガイドは、近代的なスタジアムの設計と建設に関するあらゆる側面に言及しています。ここに、21世紀のスタジアム・デベロッパーが認識しておくべき要点と考慮点のいくつかを挙げておきましょう。◦スタジアム設計でまず重視すべきは、利用者に最大限の快適さと安全性を提供することで、人に優しい構造を実現するために必要な要素である。◦サッカースタジアムは都市を象徴する建造物として受け止められる傾向が強まっており、周辺の地元コミュニティーと地域のインフラに多大なる影響を及ぼす。◦予算が比較的限られていても立派なスタジアム建設は可能である。つまり、中小規模のクラブでも画期的なデザインで存在感をアピールし得る。◦スタジアムは地元コミュニティー全体に寄与すべきものであり、試合観戦以外の目的でも家族で楽しめる場所であるべきである。◦スタジアム開発においては、各種設備を備えて活用することで収益を最大限に高められるようにすべきである。◦スタジアム設計は、試合観戦体験により多くを求めるようになっている観客に最高レベルの施設を提供できるよう、最新技術の応用を考慮すべきである。スタジアムの起源と現代における在り方UEFAガイド:良質なスタジアム建設の手引き
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