UEFAガイド:良質なスタジアム建設の手引き
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51観客席の奥行きと幅最適な座席の奥行きと幅は、快適さ、安全性、そしてスタジアム収容人数の三大要素によって決定されます。収容人数と快適さのバランスを見いだすことは決して容易ではありませんが、それが最終的なスタジアムの大きさを決めることになる要素になります。かつてはできる限り多くの座席を設けることに主眼が置かれがちでした。しかし、近代的スタジアム設計は快適さが重視される傾向にあります。何万人もの収容規模を持つスタジアムでは、座席サイズの数センチの差がスタンドの構造と、その結果としてのスタジアムのサイズや建設費用に大きな影響を及ぼしかねません。同様に、そうしたわずかな寸法の違いで快適さと安全性に関する座席設計の質を大幅に向上させることもできるのです。列と列の間隔が広いほど、非常時に迅速な避難を実現しやすくなります。奥行きと幅の面で座席を最適に設定する上での具体的な指針に関しては別の資料も用意されています(文献目録参照)。1列当たりの座席数1列当たりの座席数は安全収容人数を確定する上で、また、センターラインからの主要構造上の格子間隔(座席ブロック)を最適化する上で重要な要素です。1列当たりの座席数は観客に対する快適さと安全性に直接的な影響を及ぼします。1列当たりの座席数が少ないほど、快適さとアクセスのしやすさが増すことは言うまでもありません。一般的な座席数は1列当たり25席から28席ですが、特定のスタジアムにおける具体的な数値を決定する前に最新の地域および国際的な指針と規制を確認しておくべきでしょう。座席は未使用時には座部が上側に跳ね上がるように設計されている必要があります。それによってスタンド内通路の幅が広がることになり、アクセスしやすさが改善されるからです。緊急避難時には特に重要ですが、イベント終了後のスタンド清掃時にもメリットをもたらします。スタンド配置形状座席エリアの構成はピッチの配置に直接的に影響され、結果として形状は長方形になるという考え方は理にかなっていると思われるかもしれません。実際、初期のスタジアム設計はこの理論に基づいたものでした。しかしこれは、各スタンドの端、特にゴールに最も近い位置に座る観客の視界を制限してしまうことになりました。座席は真正面を向いて設置されているため、試合の展開を追うには頻繁に横を向かなければならなかったのです。理論上は、極力ピッチに近い位置に配置された曲線的なすり鉢形状がサッカースタジアムには理想的です。ピッチ全体を見渡せる視界をほぼ均一に全観客に提供することが可能になるからです。すり鉢形状は平面図と断面図の両方で確認されるもので、直線状に見える観客席の角度は実際には微妙な曲線を描いているのです。この断面で確認できる曲線が「C・バリュー」と呼ばれるもので、各座席からの視界のクオリティーを示す値です。可能な範囲で最大のC・バリュー値と断面の角度を実現してピッチとの距離を最大限に近づけるということは、収容人数の違いに応じてスタンドの設計の平面図と断面図も変わってくることを意味しています。スタジアムの予定収容人数の増加に伴い、スタンドの幾何学的設計に求められる精度も高まります。設計者は理想的な形状と最高の視界を生み出すべく、スタンドの平面と断面の間の最適なバランスを実現しなくてはなりません。設計上の主な要素およびスタジアムの機能配置

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