5UEFAガイド:良質なスタジアム建設の手引き - はじめにサッカーの世界は、進化を続けています。それはピッチの上で繰り広げられるゲームだけでなく、その舞台となるスタジアムも同じです。海外、特に欧州では、「劇場」と言えるほどの素晴らしいスタジアムが次々と整備されています。Jリーグから欧州のクラブに移籍する選手が増え、欧州各国の試合は日本のテレビで身近に見ることができる時代になりました。現地で生観戦する日本のサッカーファンも少なくありません。そうした機会に、欧州のスタジアム環境に触れ、ため息が出るようなうらやましさを感じる方も多いのではないかと思います。かつて欧州サッカーでは、スタジアムは「危険な場所」と言われるほどトラブルが相次ぎ、社会問題になるほどの危機に見舞われました。その対策がスタジアム環境を一変させたきっかけになりました。今では単なるフットボール・スタジアムにとどまらず、街のシンボルとなり、世界中から人々を呼び寄せるエンターテインメントの舞台として文化的にも経済的にも地域に貢献する施設に生まれ変わっています。そうした現在に至る欧州のスタジアム建設ノウハウを凝縮したのが、この『UEFAガイド:良質なスタジアム建設の手引き』です。欧州サッカー連盟(UEFA)が発行した本書は、スタジアム建設におけるあらゆる留意点が細かく記され、事業計画の立ち上げから竣工、その後の運用に至るまでのプロセスが網羅されている点が特徴的です。現在までに英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、イタリア語の6カ国語で出版され、各国の新スタジアム整備に役立てられています。本書は、これからスポーツ環境の整備を構想する日本各地の関係者にとっても有益な手引書になると確信しています。1993年のJリーグ開幕、2002年のFIFAワールドカップ開催を大きな転換点として、これまで日本のスタジアム環境は新設や改修が進められてきました。そして今、Jリーグの開催スタジアムをはじめとする日本のスポーツ施設は、変革の時代を迎えようとしています。昨年、長野市や吹田市に新スタジアムが整備されましたが、さらに20にも及ぶ新スタジアム構想が各地で練られており、旧来の「体育施設」としての価値観から脱却し、商業施設や医療・教育施設、コミュニティー施設など日常的な集客施設の併設、または大規模災害時の防災拠点化など、まちづくりにおける重要拠点として多様な可能性の検討が進んでいます。こうした構想の実現に向けて、ぜひ、本書を参考にしていただきたいと思います。各ページに添えられた写真や図を眺めるだけで、「スタジアムの未来」が見えてきます。「観る」「する」「参加する」。スポーツを通して世代を超えた触れ合いの輪を広げること。――スタジアム改革は、Jリーグ百年構想そのものです。本書をお読みいただいた皆さんと目指す世界を共有し、一緒に、大きな夢の実現に向かいたい、そう願っています。最後に、『UEFAガイド:良質なスタジアム建設の手引き』を制作したUEFAに心からの敬意を表するとともに、本書の日本語版発行に際し、ご尽力された全ての皆様に厚く御礼を申し上げます。公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)チェアマン 村井 満Chairman Japan Professional Football League (J.League)MURAI Mitsuru
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