UEFAガイド:良質なスタジアム建設の手引き
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11スタジアム建設の戦略的判断A:2主要目的目的の明確化スタジアムの建設や改修には合理性が欠かせません。数年間にもわたる複雑で財務的負担も大きいプロジェクトに取り組む前には、それを行う理由を明確にする必要があります。理由はさまざまでしょう。収容人数を増やすことでもたらされる利益である場合もあれば、快適さと安全性の改善である場合もあります。追加収入源として新たな設備が必要とされていたり、単純に化粧直しが必要とされていたりするかもしれません。そして、新スタジアム建設やスタジアム改修を成功させるために欠かせないポイントとして、その実現可能性がピッチ上でのチームの成績に依存しなくても済むような収入モデルの作成があります。本ガイドには、スタジアム建設プロジェクトが明確に特定された目標に沿って進められるべきであることを示す、いくつものケーススタディーが紹介されています。出発点プロジェクトに関わる人物はいくつかのキーポイントについて自問自答してみるべきでしょう。第一に、基本的な要素が設定されなければなりません。どの程度の大きさのスタジアムが必要とされているのか? 予算の規模は? そして、完成までにどの程度の期間が見込まれていて、どのような段階的な目安が存在するのか?求めるものは?多くの場合、願望も含まれるこの問い掛けが新スタジアム計画の出発点だといえます。夢のスタジアムへのこだわりから非現実的な目標が掲げられることもあるでしょう。見方を変えれば、それによってプロジェクトに取り組む人々の士気が高まるとも考えられます。しかし、次第に、より分析的で現実的な物の見方を強いられることになるのです。次なる問い掛けによって…。必要なものは?この問い掛けにより、実際に求められている事柄が特定され、現実的な目標と非現実的な目標との境界線をはっきりと捉えられるようになります。スタジアム・デベロッパーは、他の利害関係者と協議の上で計画の目的を明確にしなければなりません。そしてその際に、次の問い掛けを避けることはできないでしょう…。できることは?冷静な目で財務状況を眺めれば、将来的なプロジェクトへの着手も見据えた現実的な予算取りができるはずです。さもなければ、新スタジアムの夢はすぐに悪夢と化してしまいます。さまざまな理由により、スタジアム建設プロジェクトがクラブを何年間も続く経済的危機や倒産へと追い込んでしまった例もあるのです。まとめれば、夢と現実的なニーズおよび資力とのバランス感覚が必要だということです。初めからバランスが取れていれば、プロジェクトの成功はより現実味を増します。改修か新築か?この問いに対する答えは、その後の工程で細目にわたる一連の意思決定の枠組みを決めるものとなります。既存スタジアムは規模が小さ過ぎる、または老朽化していると感じている場合もあるでしょう。既存スタジアムを拡張して収容人数拡大を図る方が、スタジアム新設よりも、金銭面で実現性の高い選択肢となる場合があります。願望必要性資金力とはいえ、改修にも相当な費用が必要です。スタジアムを取り壊して建て直すか、別の場所に新設する方が好ましい場合もあるでしょう。スタジアム拡張に関する物理的な制限によって移転を検討せざるを得ないこともあります。決定はさまざまな事情やプロジェクト固有の留意事項に左右されます。どちらの選択肢が優れていると決めつけることはできませんが、一般的に新築は旧式のすり鉢形に縛られることのない設計を可能にし、より経済的に魅力的なスタジアムにするための設備や機能に関する柔軟性を提供する選択肢だといえます。改修の場合には、将来的にも存続性を持ち続け得るスタジアムを目

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