MANAGEMENT65「ペンライトの一体感は僕も今までに感じたことのないもので、自分でも感動するぐらいでした。演出チームが頑張ってくれて、今までにない層を取り込んでいるのは確実にあると思います。僕の孫は来年小学校に上がる女の子ですが、全然サッカーに興味がなかったのに、何度も来たいと言っているぐらいです」試合がない日はサッカー文化の発信地として機能している。広島サッカーの歴史にこだわった展示やアクティビティも設置したミュージアムは11月10日時点で約18,000人が来場。スタジアムツアーは予約でほぼ満員の状態が続き、選手になり切る体験が人気だ。さらに、オフィシャルショップはJクラブの中で実店舗での売上高が「圧倒的にナンバーワン」だという。森重部長は、「スタジアムにあることと、街の中にあるからこそだと思います」と分析する。他にも施設内のスカイボックスやビジネスラウンジを会議室やイベントスペースとして貸し出し、コンコースやピッチ脇の人工芝エリアではウエディングや撮影会など多目的に利用できる。サッカーと関係のない学会や神楽の公演も行われ、単なる試合観戦の施設ではなく、新たなイベント会場や文化の発信地としても機能している。クラブによると、オープン1年目のスタジアム総来場者数は目標の110万人を超えて、約118万人(11月末時点)に上った。日本代表戦やシュトゥットガルトとのピースマッチなども含むサッカー観戦の来場者数が約62万人を記録し、観戦以外でも約56万人が来場した。2024年度のクラブ売上高は、昨年度の約42億円から1.86倍増えて、過去最高の約78億円になる見込み。2023年の記録に当てはめると、浦和レッズ、川崎フロンターレに次いでJリーグトップ3に入る数字となった。売上高100億円も叶わぬ夢ではなくなり、サンフレッチェ広島はサッカーでも経営でもJリーグを引っ張るビッグクラブを目指していく。街なかスタジアムは周辺地域に与える経済効果も大きい。試合前に近くの商業施設で買い物をし、試合後も集まって夜の街で飲食を楽しんで帰る。今までなかった試合日の日常だ。街なかにスタジアムができたことで試合観戦の楽しみ方が増え、それが周辺地域にも好影響を生んでいる。クラブにもうれしい声が届いているという。「スタジアムがこれだけ人と話題を集めていて、街の新しいシンボルになっているので、広島全体の経済効果にかなり貢献している実感はあります。例えば、試合が開催される日の近くの商業施設では、地下の総菜売り場ではいつもの3倍くらいに売れているとお聞きしています。とにかく紫のユニフォームが街なかにあふれている光景は今までなかったことで、街で商売をされている方々からは『ありがとう』と言っていただけるので、非常に大きな効果があると思います」クラブによると、新スタジアムの経済効果はJリーグ1試合あたりで推定約11億円だという。この数字は広島経済大学の協力により、入場者数27,105人を記録した2024明治安田J1リーグ第37節・北海道コンサドーレ札幌戦(12月1日)を基に算出された。この11億円のうち、スタジアム内で約3億円、スタジアム周辺でも約8億円の経済効果があるという結果となった。
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