J.LEAGUE SEASON REVIEW 2024
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FOOTBALL37-2024年はJリーグのフットボール委員会にJFAの扇谷審判委員長が加わり、JリーグとJFA審判委員会が深く協働する画期的なシーズンでした。この関係性はどのような経緯で実現したのでしょう。足立 「Jリーグでは今、野々村芳和チェアマンの下、Jリーグをどのような作品にしていくかという取り組みを進めている中で、良い作品を作っていくためにはレフェリーの皆さんとも一緒になって取り組む必要があるということで始めました」扇谷 「レフェリーは独立したものとして見られがちですが、リーグの方にも審判に関する議論に入っていただいたり、審判の研修会に参加していただいたりすることで、お互いの理解が進んできていると感じます。どうしてもレフェリーのジャッジについてはネガティブな面が注目されやすいですが、良い試合をつくろうという目標は一緒だということで、協働することができて非常にありがたいと感じています」-Jリーグの立場として審判の現状をどう感じていますか。足立 「僕は2023年までクラブ(広島)にいましたが、審判のことは正直見えない部分が多かったんです。フットボール委員会が発足して、審判ともどういう作品を作っていくかということがテーマに上がってきた中、扇谷さんはかなり各クラブに足を運ばれていて、ありがたいと感じていました。その中で僕もいろいろ意見したこともありましたが、これからより変われるのではないかなと思っています。審判も競技者であり、人なのでミスはあるけど、それは選手やチームも同じです。そういうときに人として話し合って認め合えれば、わだかまりもなく次に進めるわけです。そういった環境ができ始めていると思いますね。シーズン移行を前にJリーグ全体が新たなフェーズに来ている中で、歴史が変わり始めた1年になったと思います」-審判の立場から見て変わったことはありますか。扇谷 「シーズンを通して耳にするのは、Jリーグの方やクラブの方がより審判に声を掛けてくださるようになったということですね。小さいことかもしれませんが、研修会や試合会場で控室に来てくださったり、ピッチチェックで声を掛けてくださったりというのは本当に心強いことです」足立 「僕も実際に思ったのが、試合前後に選手と審判が整列するじゃないですか。そこで今までにないくらい、選手が笑顔で審判団と握手を交わす場面が見られるようになったと思います。そういったところからもお互いの信頼関係が生まれ始めていると感じています」扇谷 「あと、これは細かいことですが、研修会などで審判の補食が話題になって、それからクラブスタッフの方が用意してくださることがあるんです。現役審判員から『こんなにやってもらえるとは』という声を聞いています。そういったことも含めてありがたいシーズンだったなと思います」-外からは見えにくい部分なのでとても興味深いです。レフェリーの質について、今後の課題を教えてください。足立 「扇谷さんとも話しているのですが、これからの若い審判員、特にサッカー観の高い、選手出身の審判員をどう養成していくかは一つのテーマです。フットボールのトレンドが進んでいる中、審判の方々にレベルを上げてもらっているのも事実ですが、さらに一緒に高めていきたいと思います」-海外との交流プログラムによって、海外の審判員がJリーグを担当する試合もありました。扇谷 「交流はまだまだ増やしていきたいと思っています。もっと日本のレフェリーを育てないといけない部分もありますが、カタールでのFIFAワールドカップを担当したイスマイル(・エルファス/アメリカ)のような世界のトップレベルのレフェリーから学ぶ機会は必要ですし、また海外の若いレフェリーも非常に魅力的で学ぶことが多いです。ACLに出場するチームにとってもアジアのレフェリー、特に中東のレフェリーは知っておいた方がいいと思うので、Jリーグに協力していただきながらより取り組みを広げられればと思います」足立 「日本人はまだ海外のレフェリーに慣れていないので、リーグとしてもすごく良い刺激をもらいましたし、クラブからも前向きなフィードバックがありました。海外のレフェリーは基準がはっきりしている傾向があるので、そこは日本人の審判員にも学んでもらいたいですね」

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