J.LEAGUE SEASON REVIEW 2024
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FOOTBALL-チーム編成の変化に関しては、シーズン移行も前向きな転換点にしていく必要がありますね。足立 「これでスケジュールは世界のスタンダードにそろいます。そうなると逆に言い訳できなくなるので、この準備期間のうちに意識を高めていくことが大事だと思います。強化も海外の強化担当との競争になり、海外からGMが来る可能性もありますし、すでにそういった動きも出てきています。日本の強化担当も世界で戦えるよう、Jリーグでもきちんと方向性を持ってサポートしていきたいと思います」-来シーズンの展望は。足立 「フットボールの面では良い選手をたくさん出し続けることが一番だと思います。Jリーグの価値を上げるためには選手の質、指導者の質を上げることが大切で、実際にそうした意識はシーズン移行の議論を通じて現場に広がってきて、意識が上がってきたのは間違いないと思っています。意識が上がらないと、環境を変えても現状は変わらないので、われわれとしては良い選手を育成することに意識を向けながら、そのために引き続き環境をつくっていくことが大事です。移籍をするときには高い金額で移籍をしてもらう、そのお金で選手を獲得してチーム基盤をしっかりつくる、そうしたビジネス規模をもうワンランク上げられるようなアプローチをリーグ全体で行っていくことに向き合う大事なシーズンになると思います」36-2026年からのプロABC契約の見直しは、Jリーグの歴史においても一大改革だと思います。どのようなきっかけで見直しに至ったのでしょうか。足立 「プロABC契約が策定された25年前はクラブ経営の安定化が必要な時期で、出場機会の少ない選手の年俸が高いということも指摘されていました。そこで金額の基準と人数制限をセットで考えて導入されたのがプロABC契約です。ただ、それから25年がたって世界の競争環境も変わってきた中で、世界に勝つためにも選手の待遇が低いことは是正しようという動きになりました。また議論の中では、25年の間にバスケットボールやバレーボールのプロ化もあって、他の競技と比べてもJリーグを競争力のあるものにしていこうという話も出てきました」-選手の待遇改善に加えて、プロ選手の人数制限緩和も重要なテーマですね。足立 「人数制限についてはこれからもっと議論をしていきますが、最近は選手側も『試合に出られるクラブに行こう』という見る目が肥えてきていて、ある程度は変更しても良いフェーズに来ているのではないかと思います。もちろんプロABC契約の改革だけで海外との競争に勝てるとは思っていませんが、人数制限は2年後、3年後に向けて完全撤廃も含めて継続検討していきたいと考えています」-プロABC契約の撤廃によって、どのように変わることを期待していますか。足立 「まず期待するのは、規制緩和によってクラブがどう色を出すかだと思いますね。われわれとしては外国籍選手枠に関する議論もしていますし、必ずしも選手育成だけを考えているわけではないのですが、地元に根差したクラブをつくるんだというスペインのアスレティック・ビルバオのようなチームがあってもいいと思います。逆に勝つためにたくさんの選手を集めるクラブがあってもいい。そういった個性的な色を出す機会につながるのではないかと思います。規制緩和の中で、各クラブがいかに自分たちの予算を守りながら、どういう選手を育ててチームに集めていくかが楽しみだなと感じています」-強化部門の勝負になりますね。足立 「とりあえずトップチームに上げようとか、とりあえず選手を取ろうとか、もうそういう時代ではない。スカウトもGMも身を粉にして、目を皿にして見ていくことが求められる時代になると思います」-強化部門からすると大きなパラダイムシフトだと思います。長年その立場に立っていた足立ダイレクターから見て、どれくらい困難なミッションだと思いますか。足立 「難しい仕事だと思いますよ。例えばビッグクラブが1,200万円をポンと出せる選手に、他のクラブは600万円しか出せないということもあると思います。ただ、逆にまだまだ見落とされている選手は必ずいます」

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