J.LEAGUE SEASON REVIEW 2024
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FOOTBALL-そうした取り組みを通じ、Jリーグの将来像をどう見ていますか。足立 「われわれとしてはまずJリーグという作品をどう作っていくかが大事で、これは揺るぎないものです。その上で『5大リーグにどう立ち向かっていくか』という課題があります。そのためにも若い選手にどう刺激を与35一つの目的は16歳、17歳くらいでも飛び級で活躍できる選手に、90分の真剣勝負ができる環境をつくるということです」-欧州のU-21リーグは飛び級の選手も多く見られますし、トップチームやU-19との掛け持ちも機能しているように思います。足立 「例えば広島では高校3年生で18歳の中島洋太朗がトップチームで試合に出ていますが、彼は高校年代の高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグWESTの試合にも出ています。同じ世代の井上愛簾も、Jユースカップの準決勝に出て、翌日にはトップチームのアウェイゲームの浦和レッズ戦に帯同して、それからU-19日本代表のメキシコ遠征に行って、帰ってきてからAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2のフィリピン遠征に行って、またプレミアリーグWESTに出て……という日々の中でいろいろなゲーム経験ができています。ただ、彼らが19歳になって高校年代の試合がなくなると、後はJリーグだけになってしまう。中島のような同世代のトップ選手でもJリーグに限れば長くて30分程度の出場時間ですよね。果たして19歳のトップ選手が週1回、30分の出場で良いのかどうか。もしU-21リーグがあれば、そこで90分間の出場時間を担保でき、1週間に合計120分間のチャンスが出てきます。他の16歳、17歳のスーパーな選手たちもU-18よりもレベルの高い、厳しい環境でチャンスが与えられます。これまでポストユースの育成は大学に依存していて、大学で試合に出ているからこそどんどん上に行っているといえますが、中には4年間は長いという選手もいます。そこにはいろいろなパスウェイがあって、U-21リーグが合う選手もいるでしょうし、大卒でプロに入る選手も、高卒でプロに入って違うカテゴリーに期限付き移籍で行く方が良い選手も、海外にポンと行ってみた方が良い選手もいる。U-21リーグありきではないですが、パスウェイをわれわれが一つしっかりと持つことで、ユース以上・プロ未満の場所をつくってあげたいという考えで議論をしているところです」-U-21リーグ創設の議論ではどのような点を重視していますか。足立 「やはり真剣勝負の場であることです。一つの大会としてお客様にも見てもらい、一つのパスでゴールを決めるとか、一つのミスで失点して負けるとか、時には厳しい目にさらされながら、時には拍手をもらいながら戦わないといけない。その環境づくりをどうしていくかが大事です。ユースからトップの間というのは各国を調べてみても、みんな同じようなところで悩んでいます。でもそこに向き合った国が上のレベルに行っている。もしU-21リーグが立ち上げられなかったとしても、ユース以上・プロ未満の選手たちにどう刺激を与えるかという施策を打っていくことは間違いなく必要だと考えています」えるか、今いる選手とどう融合させていくのかという環境づくりが重要だと思います。僕自身、広島のミヒャエル スキッベ監督など外国籍監督とも一緒に仕事をしましたが、彼らの意見はみんな同じで『5大リーグのすぐ下はJリーグだ』、『Jリーグはもっと自信を持ってやった方がいい』と。だからまずはそこに自信を持ちつつ、しっかりとJリーグの中身を上げていかないといけないと感じています。その点、神戸のケースがすごく印象的ですが、5大リーグに行った選手が帰ってきてJリーグで活躍して、レベルを大きく上げてくれています。ただ、今後はもしかしたら10代後半で海外に行って20代半ばで帰って来るという形で、そのターンがより早くなるかもしれないなと思います。またもう一つの動きとしては、世代別の代表に海外在住の選手もいますよね。彼らは5大リーグに簡単に行けないのは分かっていて、中にはJリーグでやってみたいという選手もいるようです。例えばそんな選手がユースまで海外でプレーして、トップチームはJ1でスタートして、そこから5大リーグを目指すという例も出てくるかもしれません。5大リーグのサイクルの中にJリーグがどう入っていくかが鍵になると思っています。Jリーグはその可能性を持っているリーグになっていると思いますし、Jリーグから出てきた日本代表選手があれだけ活躍していて、FIFAランキングも上がってきている。日本には金の卵が間違いなくいて、それを育てるポテンシャルもあるリーグなので、そこをどう活かすかに向き合っていけたらと思っています」-5大リーグのサイクルに入ることで、移籍金収入も含めた選手育成の循環が生まれることも期待されます。足立 「目の前にはシーズン移行が迫ってきていて、若い選手がどんどん海外に出ていってしまうのではないかという懸念も耳にします。もちろんわれわれとしても積極的に外に出したいわけではありませんし、選手はクラブの財産です。ただ、外に出すからには高い金額で売るべきというのがわれわれの思いです。クラブにはそういう意識も持ってもらいたいと思っていますし、一つの土台となるプロABC契約も変えました。今が歴史の変わり目だと考えています」

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