J.LEAGUE SEASON REVIEW 2024
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FOOTBALL34日本サッカーの水準向上に取り組んでいるJリーグの足立修フットボールダイレクターと日本サッカー協会(JFA)の扇谷健司審判委員長が、今シーズンのオンザピッチにおける振り返り、選手契約制度の改定、若手育成、審判育成などさまざまなトピックについて語った。-Jリーグフットボールダイレクターとして1年目のシーズンが終わりました。主にフットボールの質に着目されていたと思いますが、今シーズンのJリーグをどのように見ていましたか。足立 「J1からJ3まで、プレーの強度が上がっていたと思います。昨シーズンまでも現代のトレンドを意識して、模索しているように思っていましたが、今シーズンはさらにハイインテンシティ型、高い強度のフットボールにシフトして、日本が世界トップと戦うためのフェーズに入ったなという印象があります。ただ来シーズンはそれに加えて、質を高めていく必要性も感じています」-強度だけでなく質も求めると。足立 「もちろん質を求めるには、高い強度が前提になります。僕がサンフレッチェ広島で強化をしていたとき、ペトロヴィッチ監督や森保一監督ともポゼッションフットボールを志向したことがありましたが、ただ質を上げようと言っても日々のトレーニングの強度を上げないと質は上がらないんですよね。今の日本代表に選ばれる選手の特徴の一つは、高い強度の中でも高いクオリティを出せることです。ですから今シーズンのように強度が高くなった中でも、クオリティにより目を向けていくことが必要な時期にあると思います。特にアタッキングサードの質は重要です。例えば今シーズンのヴィッセル神戸は最後に仕留める3人(武藤嘉紀、大迫勇也、宮代大聖)がいて、あの強度の中で3人とも10点以上取っているわけで、優勝できた理由はそこにあると思います。逆に2位の広島、3位のFC町田ゼルビアはその点が足りなかった。アタッキングサードまで行けるクオリティはある中で、さらにゴール前のクオリティをどう求めていくか。ここは育成においても向き合っていかないといけないポイントです。前線を外国籍選手に頼るというチームもありますが、神戸は日本人3人が10点以上取っているわけで、各クラブでそのような環境をどうつくっていくかも重要なポイントになると思います。そういった点も含めてハイインテンシティ+クオリティ、これが来シーズンからJクラブの目指す一つのチーム像だと考えています」-育成の話が出ましたが、短い時間では成果が出にくい部分だと思います。現在のJリーグの選手育成についてどう感じていますか。足立 「今シーズンで一つ印象的だったのは、J2・J3で21歳以下の若手選手がどんどん出てきていることです。Jリーグは今年から21歳以下で印象に残るプレーをした選手を対象に、月間ヤングプレーヤー賞を設けていますが、J2・J3で出番をつかんで対象になる選手が増えてきています。おそらくこれは選手たちも今の状況を分かってきているからですよね。J1に行って試合に出られないのであれば、J2・J3で試合に出てから次に行こうと、そういう時代に入っているのかなと思います。来シーズンはもちろん、彼らが同じチームでさらに頑張ってくれるのも良いですし、また一つ上のレベルで活躍して、どんどん未来への種をまく存在になってくれるんじゃないかなと期待しています」-若手の起用に関しては各クラブの意識の変化も大きいように思います。足立 「どのクラブも若い選手を育てていかないといけないという思いは強くなっていますね。期限付き移籍で行かせるのか、自チームで下から育てるのか、さらにアカデミーにも力を注ぐのかというのはそれぞれ模索中だと思いますが、次世代の選手を育てなきゃいけないという意識はどこも高まっています」-現在はU-21リーグ創設の構想が進んでいるとのことですが、Jリーグとしてはどのような取り組みを考えていますか。足立 「U-21リーグ創設の構想は目的が大きく2つあって、一つがポストユースの強化です。高校卒業後にJリーグで出場機会がなく、ポテンシャルを発揮できずに終わっていた選手も、もしかしたら試合に出ることで20年間活躍できるような選手になるかもしれません。またもうJリーグが推進するフットボール改革

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