J.LEAGUE SEASON REVIEW 2024
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TOPCS-充実した活動を送られていると伝わってきます。その中で印象に残った出来事はありますか。辻井 毎回、参加者にご協力いただくアンケートで、あるお父さんが「息子談」と書いてこんな感想を寄せてくれました。8歳の子が「僕が変わればお兄ちゃんも変わるし、お父さん、お母さん、同級生も学校の先生も変わるから、自分から変わらなきゃ」と言ったそうです。お父さんも心を打たれて「自分もできることをやろうと思いました」と。小野 すごくうれしいですね。サッカーでも、良い選手になりたいと思えば、どれだけ練習するかは自分次第。良い環境をつくることも、一人一人の行動、自分次第ですよね。そういった意味でもサッカーとサステナは親和性がありますね。僕はサッカー教室に女の子の参加が多かった点も心に残りました。なでしこジャパン(日本女子代表)やWEリーグを見て、自分もサッカーをやってみたい、という女性が増えてきているなと。一度、どこだったかな。最初は参加していた一人の女の子が、できないと思ったのか途中でピッチから出ちゃったんですよね。でもその子も「一緒にやろうよ、やろうよ」と声を掛けたら戻って、周りの子も協力してくれて、最後はすごく楽しんでくれた。辻井 小野さんが上手なんです。毎回「サッカー、初めての子は?」と手を挙げてもらい、最初はつきっきりで教える。すると上手な子が、他の子に教えてあげる光景が出てくる。伝わっていくんです。小野 そういうものを見られるのも面白いです。結局、教わって学ぶのではなくて、見て学ぶ。本当に大事なことだと自分自身も思ってきた中で、いろんなしぐさ、動作が子どもたちに見られていると実感します。だからこそ、僕らは本当に良い見本でなければいけないですね。-ツアーを通じ、JリーグやJクラブのできること、可能性を感じられた点もあるかと思います。小野 現役時代以上に、気づきが多かったですね。気候変動への取り組みにしても、こうして辻井さんが発信したことで、いろんなクラブが確実に少しずつ興味を持ち、学ぼうとしている。そのクラブからまた、アカデミーやその保護者の方、サポーターの方、いろんな方々に伝わっていく。すると各クラブでの特徴や地域性が生まれ、何かを変えようという声も生まれる。簡単なことではないですけれども、小さなことをコツコツやっていけば必ず大きな力につながる。そのためにも、この活動を継続していかなければと思っています。辻井 気候変動対策への賛同が広がりつつある今は、みんなで現状を知る段階です。リーグ、クラブの事業でどれだけ温室効果ガスが出ているかといった情報を、隠さず公開してゼロに近づけようと、まずは意識と行動を変える。でも個々でできることというと、冷房の温度を下げるだとか、我慢、清貧のイメージになりがちです。そうではなく、環境負荷の少ない仕組みづくりこそが重要です。そこへつなげるための、今は助走期間と考えています。例えば、試合日のスタジアム行きバスをCO2の出ない車にするとします。自治体だけでやろうとすると「なぜサッカーだけに税金を使うのか」という話になる。企業だけがやろうとしても、コストがかかり、条例や規制も障壁になる。でもJクラブが関係各所をつなぎ、試合日以外は地域の方々に使ってもらうようI20

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