TOPCSI19「アニメで見せた方がいいのでは」という意見があった。太陽が汗をかく、雲の目が回る、イカが墨を吐く。そんなイラストにしたら、子どもたちの食いつきが劇的に変わりました。-そのサステナトークについて。一見、つながりが薄いようにも思えるサッカー教室と気候変動問題を、どのような経緯で掛け合わせようと考えたのですか。辻井 実は小野さんのサッカー教室に「サステナ、くっつけられないの」と提案したのは僕ではなく、他の理事でした。それがまずうれしくて。子どもたちはサッカーを楽しんで「この楽しいサッカーを続けるには、気候ってとっても大事なんだよ」と語り掛ければ、素直に耳を傾けてくれます。加えて保護者の方々の多くは、小野さんのご活躍をリアルタイムで知る世代。その小野さんが「大事なことですよね。お子さんの未来を一緒に守りましょう」と言ってくれたら、それはもう(笑)。お子さんの未来を守ることと、サッカーを守ること。大義名分としても、整合性があると感じています。とはいえ、サッカー教室前後の10~15分で全ては伝えられません。ちょうどJリーグで、小野さん、中村憲剛さん、内田篤人さんが科学者の江守正多さんに話を聞きながら、気候変動について学ぶ「気候アクション動画」を編集していました。だからサステナトークで「気候って大事だ」と思ってもらい、動画のQRコードがついた小野さんのサイン入りステッカーを渡し、帰宅後も学んでもらえるようにしました。小野 やって本当に良かったですよ。江守さんのお話を伺って僕自身も「こんなことになっちゃうの」と衝撃を受けました。このままではスポーツをする以前に、生きていく上で大事な環境が失われていく。今の子どもたちは学校で気候変動について学ぶ機会もあり、ある程度のことは知っています。そこで保護者にも聞いてもらい、一緒に勉強していこう、と。親子のコミュニケーションにもつながる仕掛けになっています。僕もサッカーだけに特化するつもりもなかったので、面白そうだと思いました。1時間半、サッカー以外にもいろんな学びがある場になればいい。例えば英語などもいいかもしれません。学校ではテストに向けた勉強になりがちだけど、生活やサッカーにつなげられれば、子どもたちの未来や、自信にもつながります。自分も「幼い頃にこういうことをしてもらったらうれしかっただろうなあ」と思いますもんね。辻井 英語で環境を学ぶとかも、面白そうですね。あと、気候が激変しているかもしれない2100年に「何歳になってる?」と問い掛けると、6歳の子ってまだ80歳なんです。本当に彼らが生きていく中でシリアスに直面する問題です。気候アクション動画の再生回数も、4月中旬にリリースして5万回ほどに伸びた後、いったん停滞しました。それがスマイルフットボールツアーのたびに増え、11月末時点で6万8,000回超。これが10万回になれば、年間でサッカー観戦に来てくださる方が1,000万人ほどとして、その1%の方が視聴したことになります。賛同の輪が広がり、Jクラブも前向きに捉え始めています。小野 子どもたちが大きくなったときに、少しでも僕たちの言ったことを思い出してくれれば何よりです。すると、中にはまた同じように伝えていってくれる人も出てくる。僕も今の活動の原点は、セルジオ越後さんのさわやかサッカー教室です。サッカーでも気候変動でも、伝道師になる人が将来、1人でも多く出てきてくれたら。その輪が広がって大きくなり、また次世代につながっていけば、と願っています。
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