J STATS REPORT 2024
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7 2024年12月12日、日本サッカー協会(JFA)が発信する新たなサッカー体験施設「blue-ing!(ブルーイング)」で、JFAとJリーグの共催によるJクラブ向けのアナリスト勉強会を行った。もともとはアナリストがプライベートで集まる場だったが、重要性を増すアナリストの養成や情報共有のために2021年から現在の形で開催されるようになった。 プログラムの内容はJFAとJリーグが話し合って決められるが、JFAテクニカルハウスの代表活動報告、海外や他競技の最新事例紹介、参加者のディスカッションなどが定番メニューとなっている。 JFAのテクニカルハウスは日本代表のサポートはもちろん、実験的なルールや新たなトレンドの発信源になるアンダーカテゴリーの国際大会で貴重な情報をキャッチアップしている。この勉強会はJFAの分析チームが得た現場での貴重な知見をJクラブのアナリストたちに共有する場としても機能している。今回はAFCアジアカップ2023を例に、分析チームの体制やミーティングなどのスケジュール、東京大学や筑波大学の大学生によるサポートチーム運用方法まで含めて詳細に伝えられた。 海外セッションは「シーズン中は多忙のためインプットの機会をつくりづらいJクラブのアナリストのために最新事例を提供する時間にしたい」という目的で組まれている。2024年7月には、Jリーグインターナショナルシリーズのため来日していたニューカッスル ユナイテッド(イングランド)のトップチームパフォーマンスアナリストがパフォーマンス分析について講義を行った。今回はボルシア・メンヘングラートバッハ(ドイツ)のヘッド・オブ・アナリストがクラブにデータ部門を設立するまでの経緯を解説。その他にも、データスタジアム社のFootball BOXや海外のトラッキングデータ分析サービスなどの新たなテクノロジーツールの紹介も実施された。 ディスカッション・パートでは、グループに分かれて「アナリストの課題」「分析の体制・役割分担」「Jリーグへの要望」などの共通テーマで議論。「シーズン中は問題点を含めて他クラブのアナリストと意見交換できる機会がないので、有意義な時間になった」というのはもちろん、「アナリスト同士の横のつながりができる」というコミュニティ化の価値を評価する声が多かった。ランチセッションや懇親会など今回から始まった取り組みも、それを後押しする意図だ。 コロナ禍での開催となった2021年にはオンラインのみで50人ほどだった参加者数が、今回はオンライン・オフライン合わせると倍以上に増加。各クラブのアナリストだけでなく強化部からの参加者もおり、この分野への関心の高まりも感じられる。 データの活用、試合分析が勝敗に及ぼす影響が年々大きくなっていく中でアナリストの発掘や育成、そして地位向上はサッカー界全体で取り組んでいくべき課題といえる。「われわれができるのはあくまでサポートや場をつくること。オフシーズン以外でもクラブ間を横断した情報共有の機会をつくっていきたい」というのがJリーグ側の願いだ。 サッカー界で徐々に存在感を高めているアナリストたちが集う場で、何より印象的だったのは参加者の若さとエネルギーだ。午前11時に始まったイベントは、懇親会も含めて20時過ぎまで熱気に包まれていた。(文:footballista 浅野 賀一)コラム:アナリスト勉強会レポートJクラブのアナリストたちが集結学びを共有するコミュニティへ THE J.LEAGUE

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