J STATS REPORT 2024
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©VISSEL KOBE©VISSEL KOBE13 「誤解されたくないのが、われわれは今現在、完全なるデータ(饗場氏)とで、神戸の監督・コーチ・スタッフの信頼度も増してきたという。 「2023年も2024年も吉田監督の志向しているサッカーは変2024年の方が高いんです」(饗場氏)くい視点だろう。 「われわれとしては優勝したことを喜ぶよりも、勝てた理由をドリブンな世界を目指しているわけではありません。複雑性が高いサッカーという競技で数字をうのみにする危険性は理解していますし、プロフェッショナルの経験や知識をリスペクトしています。彼らの定性的な評価と定量的な評価を合わせて意思決定のクオリティを上げていく助けになればと考えています」 データは敵ではなく味方――というスタンスを徹底してきたこ「特に自分の感覚が裏付けられるデータがあると、『データっていいね』と感じてくれるみたいです」と松本氏は笑う。 フィジカルデータを取り扱う饗場氏は「データを解釈するのはスペシャリストであるフィジカルコーチの仕事」と強調しつつ、データを見る「目」が増える利点を教えてくれた。わっていないのですが、トラッキングレポートを通年で見ると試合のインテンシティの傾向は異なります。プレシーズンにおける調整の違い、試合数の違い、気温などの外的要因によってインテンシティのピークや変動に変化が生まれています。例えば11月の試合日の平均気温は2023年と比べてプラス8度ほど こうした一歩引いた角度からの統計的な分析は、週末の試合に向けた毎日のトレーニング、対戦相手の分析や選手のコンディション管理に神経を集中している監督・コーチ陣には持ちに シーズン終了後、あるいはサマーブレーク中には各セクションの現場に出ていたスタッフたちがデータプラットフォーム部に戻り、自分たちの戦術的なポイントを振り返る総括を行う。それぞれの現場での気付きを各スタッフが持ち寄り、一つ一つ積み上げていくさまざまなデータが、クラブのナレッジとして同部にアーカイブされていくわけだ。 リーグ戦2連覇の快挙を達成した神戸だが、データプラットフォーム部の目線はすでに未来に向いている。ブレークダウンしてクラブの学びとして未来につなげていきたいです。川崎フロンターレや横浜F・マリノスを見ても、勝ち続けることの難しさは理解しているつもりです。サッカーは人がやるスポーツ。すべてがうまくいくことはないですし、いい時も悪い時もその原因をしっかり分析していくことが大事だと考えています」(饗場氏) 「2連覇は監督・コーチ・選手たちの頑張りから生まれた成果で、僕らがそこに一喜一憂することはないです。データの価値の一つは、数字として自分たちの成長を可視化できること。右肩上がりの成長を続けること、常に前年の自分たちを超えるという意識を持つことが、今後は求められていくと思います」(松本氏) 来シーズンの展望として饗場氏が挙げてくれた視点もユニークだった。 「AFCチャンピオンズリーグを戦った今シーズン序盤の横浜F・マリノスは、かなりの過密日程を強いられていました。来シーズンはうちがその状況に陥るので、当時の横浜F・マリノスのデータから見えてきた傾向は現場にも伝えられればと考えています」 最後に、データプラットフォーム部としての今後の目標を饗場氏に聞いてみた。 「ここまでの5年間でトップチームの各領域にデータが根付いてきたので、それをアカデミーにまで広げていくことが、中・長期的な目標になります。トップ選手の試合スタッツやフィジカルデータは若手のベンチマークになりますし、アカデミーの選手たちの成長の過程をアーカイブしておくこともクラブの財産になります。いずれにしても、結果を冷静に受け止め、分析して、クラブの血肉にしていくサイクルを地道に続けていきたいです。まずは来シーズンに待ち構えている過密日程に立ち向かっていけるように、現場をサポートできる材料をそろえていきたいです」(文:footballista 浅野 賀一)■データを見る「目」が増える利点■結果に一喜一憂せず、未来につなげる仕事

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