トップチームのデータに関わる全領域を支える専門家集団が実践する「データをワークさせる仕組み」12OVERVIEW©VISSEL KOBE©VISSEL KOBE 2024明治安田J1リーグを制したヴィッセル神戸は、ピッチ上の結果だけでなくデータ活用に関しても先進的な取り組みを行っている。 「データプラットフォーム部が設立されたきっかけは、三木谷浩史会長の声掛けでした。人の入れ替わりが激しいプロの世界では、成功が属人的になってしまうことがあります。そうではなく、ビジネスの世界と同じように科学的アプローチを増やして組織として積み上げていく仕組みをつくり、トップチーム全体が継続的に成長していくサポートをすることが目的になります」 そう語ってくれたのは、データプラットフォーム部の部長を務める饗場 雄太氏。楽天でECサイトの広告システム開発・分析を担当していた饗場氏は、2019年にこの部署が創設されたタイミングでサッカー界に籍を移したビジネス分野のデータ畑出身者である。同部の担当領域はデータに関わる全て、スカウティングなど強化部の仕事から現場での分析まで多岐にわたる。立ち上げ5年間で数名のスタッフが所属しているが、ユニークなのはそれぞれが複数セクションの業務を兼任していること。 「もしかしたら海外クラブのデータ部門とは異なるやり方かもしれませんが、神戸では現場での業務の流れや課題をより深く理解し、データを活用した運用サイクルを構築していくために、それぞれのスタッフが各現場を兼任しています。例えば、私はパフォーマンスメディカル、松本は現場のアナリストの一員として分析業務を担ってもらっています」(饗場氏) この部署の立ち上げメンバーでもある松本 大地氏は、一般的なアナリストと同じように現場で監督を支えるテクニカルスタッフの一員として名を連ねている。 「イメージとしては、データプラットフォーム部と現場の半々に籍を置いている形です。そのおかげで監督やコーチたちが今抱えている課題や空気感を部署全体で共有できています」(松本氏) データが持つメリットの一つとして饗場氏や松本氏が挙げてくれたのがコミュニケーションツールとしての機能だ。「それぞれの監督にはやりたいサッカーがあるので、その実現度を測るための指標を設定しています。それを強化部と共有することで、今現場で何が起こっているのかを理解できる一助になりますし、現場と強化の目線がそろい同じ言葉で話せるようになる効果もあります」(饗場氏) 「試合の振り返りとして、僕らが『朝刊』と呼んでいる試合明けの練習日の朝に監督が気にしているポイントとなるスタッツ、試合のチーム・個人のパフォーマンスデータを一目で見やすく一覧できるものを渡しています。それを見てコミュニケーションが生まれ、現場で議論に発展することもあります」(松本氏) 同時に松本氏が意識しているのは、本質的なデータの見極めや見せ方だ。膨大なデータの中から本当に伝えて意味のある情報のみに絞り、イラスト加工なども用いて直感的に理解できるように工夫しているという。貴重なデータも伝わらなければ宝の持ち腐れとなるからだ。ヴィッセル神戸 データプラットフォーム部インタビュー■データプラットフォーム部のユニークな立ち位置■データはコミュニケーションツール
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