J.LEAGUE TECHNICAL REPORT 2023 SUMMER
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■■■■■■■■■■■■■■■■■越 智 「GK+1の作り方でいうと、横浜FMよりもシティの方がGK+1をより生かしたパスの動かし方をしていましたね。ビルドアップで印象的だったのは、ワンタッチパスでの落としのパスの精度です。シティの選手はGKに強いプレッシャーがかかる場面では、その次にフリーになる選手に対してヘルプに入る3人目の選手は、必ず相手を背負った状態でボールを受けていました。その3人目の選手に対して入れるレイオフと呼ばれる縦パスと、ワンタッチの落としのパスの精度が非常に高かったです」片 桐 「バイエルンに関しても同じ印象を持ちました。ワンタッチに関するデータとしては、川崎Fとバイエルンの2チームはそれほど大きく変わりませんでした。しかし、バイエルンのワンタッチ、特にビルドアップでのワンタッチが上手いことは私も感じましたね。川崎Fも前線にボールが入った時や、攻撃に入った時のコンビネーションでのワンタッチは多く出てきますが、ビルドアップでのワンタッチ、中盤にボールを当てて相手を食いつかせてから落として展開させるような出し入れのワンタッチは、海外で多く見られる一方、育成年代も含めて日本ではほとんど見られません。組み立てのところで、あのように質の高いワンタッチパスをされてしまえば、川崎Fクラスのチームでもボールを奪うのは難しいですね」――― 攻撃面に関してはどうですか?中 下 「データを見てもハーランドの裏抜けの回数が非常に多かったですね。後半の45分だけで21回の裏抜けを実行していました。今季のJリーグ最多は29回なので、後半だけでその数字に迫っている。質、量ともに多く、とても印象に残りました」気を抜いたら裏を取られるので、一歩二歩後ろにポジションを取らざるを得ない。オフサイドポジションにいてもパスが出る瞬間にオンサイドのポジションを取るような抜け目なさや連続性が、対峙するDFの脅威になっていました」――― キックやシュート、止める・蹴るのような技術面についてはどう見ましたか?片 桐 「川崎Fはビルドアップの局面でコントロールしてからパスを出すことが多かったですね。一方のバイエルンはワンタッチが多く、止める場合でも蹴るまでのスピードが速い。その差が、ハイプレスの成功率の差に表れたように見えました」越 智 「ハーランドは後半のみの出場でしたが、プレーの連続が多いです。単純な裏抜けだけではなく、毎回毎回DFラインの背後だけではなく、『受けに行く→落とす→もう一回背後へ』というように、常にプレーを繰り返していました。この連続性の高いプレーに相手CBはついていけてないなと感じました。クロスに対しても、ニアだけではなくファーでCBの死角へと動き直すアクションを取り続けていました。こうしたオフ・ザ・ボールでのアクションの連続性は裏抜けの21回という数字にも表れているのかもしれませんね」片 桐 「ハーランドと対峙したDFは、絶対に頭が疲れたと思うんです。片 桐 「一発で仕留めるためのコントロールの部分は、まだまだ日本座談会「世界との差」は可視化できるのか?■■――― マンツーマンのハイプレスがこれだけ主流になってくれば、ビルドアップの局面で1人の選手に与えられる時間はますます短くなりますからね。からマンツーマン気味にハメに行くプレッシング、ビルドアップでも簡単にロングボールに逃げずに丁寧に繋ぎます。ただその中で違いを挙げると、シティの場合はビルドアップの局面でさらにGKがDFラインの高さにまで上がっていました。

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