←攻撃方向←攻撃方向■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■図1 保持時のレーン、ゾーンごとのボール滞在時間(秒)図2 クロス時のPA全体とPA中央の平均人数図3 キャリー数図4 ブロック外を回すパス数(90分換算)敵 陣川崎F192敵 陣バイエルン3742.6 人3.8 人中央左88.828.4266.3127.8301.8113.6213156.2124.3230.860.4181.1合 計1054.6837.9中央左63.925.1228.2146.1273.9269.3221.4317.2109.6182.661.259.3合 計894.3974.5川崎Fのクロス11本が対象バイエルンのクロス14本が対象川崎F中央バイエルン中央右左右左右728.421.374.674.663.9230.8170.4110.1298.2323.1227.2358.8301.8188.2209.5585.8159.881.71484.1770.51253.6中央中央右38.818.361.6180.391.3148.3273.9189.4219.1493.0187.2226.0262.5262.5194.0273.9180.3141.51483.6910.7928.93.3 人4.1 人(90分換算)17664986それぞれキャリー(敵と対峙して抜き去る以外の運ぶプレー)数、ブロック外を回すパスの本数を示している。バイエルンはキャリー数、そしてブロック外を回すパス、つまり遊びのパスが多いことがわかる。これらはどちらも配置を整えるために必要なプレーである。一般に人よりもボールの方が早く動くため、前へのパスのみの前進では配置の押し上げが間に合わなくなる。よってブロックの外を迂回したり、自陣へのバックパスを多用したり、キャリーしたりすることでポジションバランスを回復する時間を作り出す必要がある。このように考えると、やはり安定性確保という面ではバイエルンと川崎Fとの間に少なくない差が生まれているとわかる。フィジカルデータの考察でも明らかになったように、連動面では課題を抱えながらも川崎Fもハイプレス局面での加速回数はバイエルンよりも多かった。その上で、戦術的な文脈でのハイプレスの有効性、そしてミドルプレス以下でのいわゆる「ブロック守備」の精度について見ていこう。守備の時間が多くなった川崎Fのハイプレスの時間が長いのはある意味当然ではあるが、その中で成功率や突破された後のリカバリーという観点で見ると、バイエルンを下回ることが表5からわかる。図6のPPDAの値でもバイエルンに大きく遅れを取っている。実際にゲームを見ると、プレスの成功率が下がった要因は大きく2つほどあると考えられる。1つ目はフィジカルパートでも述べたように距離を詰めても剥がされたり、距離が詰まらずにパスを許したりといったケースが多かったこと。そして2つ目は1人で2人を管理するような守備構造がなく、ハーフコートマンツーマンのような形であったため、一度基準点がズラされると脆い守備構造だったことである。特にバイエルンの2ボランチをマンツーマンで川崎Fのインサイドハーフが見張る形となっており、2列目と最終ラインの間にはシミッチしか残されていない状況が長く続いていた。CBが積極的に飛び出して潰そうとするも、残り3枚の最終ラインのカバーリングが遅かったのは、図7のロングボールに対して前向きに対応した最終ラインの人数を見ても明らかである。このデータからわかる通り、川崎Fが競り合う選手も含めて3人以上で対応できたシーンは1つもなかった。前向きに対応できれば一般的に守備側の方がロングボールの競り合いに強いことを鑑みても、川崎Fの回収率が低く収まってしまった背景には、ラインを早く下げる、ファーストのカバーリングに入るといった最終ラインのカバーリングの問題が大きく関わっていると言えそうである。表5はハイプレスの時間・回数・成功率および被シュート率、図6はハイプレスの強度を測る指標として使われるPPDA(低いほどハイプレスの意識が高い。計算式は「ピッチ3/5のエリアで許した相手のパス本数÷同じくピッチ3/5のエリアでの味方のタックル+ブロックドリブル+インターセプト+ファウル」)の値である。脆い守備構造川崎Fバイエルン[守 備]ハイプレス成功率一度基準点がズラされると4400%%%%vvsss 444888%%%%
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