J.LEAGUE TECHNICAL REPORT 2023 SUMMER
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バイエルン川崎F急加速加速4・0m/ss以上2・5m/ss以上■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■図1 加速・急加速の回数(90分換算)2233194218511949図2 守備ブロックの高さごとの加速回数(90分換算)349811701056図3 プレス時のコンタクト比率とコンタクト時の成功率保 持非保持ハイプレス時ミドルプレス時プレス数とコンタクト比率コンタクト数と守備成功率保 持非保持ロープレス時2023 J1リーグ7月平均2023 J1リーグ7月平均270253224202018351748305なく、むしろフィジカル能力をどう向上させ運用していくかに課題があると結論づけられる。だからこそ連動性という観点を正しく認識・評価し、向上させていくことが今後の日本サッカー全体に求められていくと言えそうだ。ハイプレス時やミドルプレス時は互角。だが、ロープレス時に顕著な差総論でも述べたように、加速も減速も、重要となるのは局面という戦術的な文脈に照らし合わせた時の数値である。ここで注意しなくてはならないのは、戦術的な要素が絡む以上、保持の時間や非保持の時間が長いか短いかによる補正抜きにデータを参照することが極めて危険であるということだ。そこで極めて簡易的ではあるが、以後はそれぞれの局面の時間を90分に引き伸ばしたと仮定した場合のフィジカルデータを見ていく(計算式は「総数÷ボール保持時間orボール非保持時間×5400秒」)。実際には90分の保持や非保持といった状況は考えにくいので、数値そのものの信頼性は乏しく、あくまでチーム同士の数値の比較に意味があることは注意されたい。よう。図2に示したのは、上記の加速回数を90分換算したものである。ハイプレスやミドルプレスではバイエルンに引けを取らず、むしろ川崎Fの方が高い様子が伺える。一方、顕著な差として見られたのがロープレス時の加速回数の少なさであり、マンツーマンベースのハイプレスを一度突破され押し込まれると、途端に連動して距離を詰めに行くといった戦術的な行動が取れなくなる事実を示している。減速力・停止力・方向転換力」が不足川崎Fのコンタクト比率が低い事実は、そもそも距離を詰め切れていない状況を示しており、コンタクト時の守備成功率が低い事実は、仮に距離を詰めることができていても、剥がされたり、フィジカル的な競り合いで負けたりすることによってプレスを空転させられてしまっている可能性を示唆している。図1に示したのは90分換算の加速・急加速のチーム比較である。保持・非保持の合計による全局面での加速回数に大きな違いは見られないことが読み取れる他、加速・急加速ともに川崎Fはボール保持局面で多く、バイエルンは非保持で多いことなどが読み取れる。詳しくは戦術データの考察パートに譲るとするが、おそらくは川崎Fの方が落ち着いたボール保持の時間が作れていなかったことに由来しているだろう。次に、非保持での守備ブロックの高さごとの加速回数を考えてみ図3、図4に示したのは、プレス時に相手に距離を詰め、コンタクトを実現できていた割合、並びに保持時にミドルサード、アタッキングサードで相手がどれくらいプレッシャーをかけてきたか、すなわち非保持時にどれくらい相手に距離を詰めることができたかの数値である。これらが導いてくれる事実は、単なる走行距離や加速回数からは推し量ることのできない、「実際に相手がどれくらいストレスを感じたか」である。川崎F川崎Fバイエルンバイエルン493438.7%23.3%283268303010.6%11.1%40.0%34.8%コンタクト時の守備成功率「トップスピードまで加速した状態からの11774488 vvsss 3334499888ロープレス時の加速回数(90分換算)222333.33%%%%vvvsss 4440000.000%%%

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