■■■■■■■■■■■■■■■■■■月23日に国立競技場で激突したマンチェスター・シティと横浜F・マリノスが所属するシティ・フットボール・グループ(CFG)には現在、両クラブを含め世界各国の13クラブが加盟している。近年、J1リーグ王者が勝ち取ってきた成功を語る上でその存在は欠かせず、例えば“アタッキングフットボール”と呼ばれるチームスタイルの礎を築き上げたアンジェ ポステコグルー前監督の就任にあたって、彼の祖国オーストラリアに乗り込んで交渉したのも2014年7月から横浜FMの少数株主となっているCFGだ。監督人事に限らず、築き上げた国際的なネットワークを生かして経営から補強までピッチ内外のノウハウを共有している世界最大規模のマルチクラブ・オーナーシップ。そのフットボール部門で2019年5月より横浜FMの担当責任者を務めているマシュー・レア氏に、マンチェスター・シティの来日に伴い関係者を通じて話を聞いた。「その他にマンチェスター・シティとの共通点として挙げられるのは、ビルドアップの局面でGKを組み込んでいる点です。マンツーマンプレスを仕掛けたのは、相手のGKまでプレッシャーを与えるためでしょう。そのGKの決断力とフリーの選手を見つけるタイミングが試されますからね。フリアン アルバレスのゴールが好例です。カルビン フィリップスのプレッシャーがGKのミスを誘い、それを見逃さなかった結果と言えるでしょう」(レア氏)マンツーマン採用の裏にある横浜FMへのリスペクトまずマンチェスター・シティはこの一戦に向けてどのような準備を行ってきたのか?CFGを通じて内部を知るレア氏はこう証言する。「ご存知の通り同じCFGに属するクラブとして、マンチェスター・シティは横浜FMのプレースタイルを熟知しています。加えてコーチとアナリストは試合前に対戦相手分析を入念に行い、それをもとに試合に向けた戦術を緻密に練っている。このプロセスは横浜FMにも共有されていて、お互いに対戦相手の長所と短所を明確にしていたのです」実際にマンチェスター・シティには4人ものアナリストが来日に同行。練習でも俯瞰映像を撮るためにドローンを飛ばそうと画策していたようだが、事前の飛行許可申請が必要となる日本の規制事情を知って断念したそうだ。試合中は記者席の前で机にノートPCを広げながら睨めっこを続け、前半が終了するとハーフタイムに監督や選手へ助言するためか、足早に階段を駆け下りてロッカールームへと向かって行った。ちなみにマンチェスター・シティ監督のペップ グアルディオラも、対戦相手の研究を滅多にしないヨハン クライフに師事したバルセロナでの現役時代を「最大の不安材料は相手がどんな戦い方をしてくるのか……。それがわからないまま試合に臨まなければならないことだった」と振り返っており、その反動で今や1日のうち6時間を分析に費やすこともあるほど。移動中も欠かさず映像をチェックしている指揮官の性格も、遠征スタッフの編成に表れていたのかもしれない。ナタン アケも前日会見で「監督から様々なビデオを見せられた」と明かしていた分析結果をもとに、マンチェスター・シティは横浜FMと同様に敵陣ではマンツーマンプレスを敢行してきた。どちらもボールをめぐって激しく前線からプレッシャーをかけ合い、小気味良いパスワークを駆使して脱出を目指していく一進一退の攻防には、横浜FMへのリスペクトが隠れていたという。「マンチェスター・シティは、ポステコグルー前監督の下で始まって現在ケビン マスカット監督に受け継がれている横浜FMのプレースタイルを、とてもリスペクトしていました。両チームともにボール保持の局面を維持しながら、ボールを失ったとしても高い位置での即時奪回を目指していますからね」「[4-2-1-3]を採用する横浜FMは、ローテーション可能なポジショニング、個々のテクニック、素早いトランジション、チャンス創出力がいずれも高いレベルにあります。それらを生かした効果的かつ攻撃的なサッカーを一貫することに長けている一方で、攻撃に関与する選手の枚数が多いため、守備に移行する時のトランジションに弱点を抱えていると分析しています」7
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