2019
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大会総括 2019シーズンはJ1・J2・J3のいずれも良い兆しがうかがえたシーズンでした。明治安田生命J1リーグは、横浜F・マリノスが15年ぶりにリーグ戦優勝を果たし、見事な復活を遂げました。果敢にゴールを狙う超攻撃サッカーは節を追うごとに迫力を増しました。「ここを見てほしい」という強烈なメッセージをもったサッカーは多くの人の心を引きつけました。クラブの集客努力も重なって、横浜FMは昨年比で最も多くのお客様を集めリーグの活況を支えました。 柏レイソルが優勝した明治安田生命J2リーグは、1999年に開幕してことしで丸20年がたち、入場者数が累計5,000万人を突破しました。世界的にみても2部で平均7,000人以上の来場数は、ドイツ、イングランド、スペイン、フランスに次ぐトップ5に入ります。J1を経験したJ2クラブは22クラブ中12クラブとなり全体の水準を押し上げています。 ギラヴァンツ北九州が制した明治安田生命J3リーグは、ことし2年連続でJリーグ百年構想クラブからの入会が決まりました。FC今治は愛媛県で二つ目のJクラブとなります。39都道府県56クラブが全国へJの思想を届けます。 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)は、浦和レッズが惜しくも準優勝となりましたが、出場クラブの健闘により日本チームが3年連続でのファイナリストとなりました。これらも影響して2021年と2022年のACLの出場枠が拡大し2クラブから一つ増えて3クラブがプレーオフを経ずに出場できるようになりました。事業総括 今シーズンはクラブの運営努力により史上最多の11,401,649人の方にご来場いただきJ1は史上最多の平均20,751人にJリーグをお楽しみいただきました。Jリーグ開幕期の記録を更新したこの数字の意味するところは、一時のブームを超え、日常的にスポーツを愛し、地元や故郷のサッカークラブを支えてくださる方の数だと捉えています。 応援してくださる全ての方に豊かなJリーグライフを届けるため、近年でクラブ共通のデジタルプラットフォームや試合の映像配信環境を整備したことで、お客様のニーズがよりきめ細やかに把握できる環境が整いつつあり、やるべきことが一層クリアになりました。お客様の声を基にスタジアムをさらに快適な環境へと整え、お客様の身近にあるデバイス上でも臨場感のあるライブ映像をお届けする。シーズンを余すところなくお楽しみいただくために、来シーズン以降、数年かけて投資を行い、観戦環境の充実に注力した取り組みを行ってまいります。安心・安全な環境づくりへ 一方で今シーズンは、クラブの運営会社の労務管理の問題や、選手へのパワーハラスメントの問題が顕在化しました。これらを受け、Jクラブでも労働環境の改善などに責任をもって対応する担当者が必要であることから、クラブライセンス制度で人事担当(ヒューマンオフィサー)を新たに基準化し、全クラブに設置を促すことを決めました。サッカーの世界で生じたことは、社会の縮図だと常々考えています。そのため、何か起きたときに封じたり隠したりするのではなく、リーグ全体で同じ失敗を繰り返さないよう、課題を共有し改善にあたるとともに、リーグ自体のガバナンスも常に点検し、社会が求める価値を生み続けるより良い組織づくりに取り組んでまいります。 さらに近年は、台風19号・21号をはじめ大規模な自然災害が私たちの生活を脅かしています。お客様にスポーツを安心して安全に楽しんでいただく環境を提供し続けることがJリーグの役割ですが、その大前提としての安全の基準が、未曾有の災害を前に測りにくくなっています。Jリーグでは、全てのスタジアムで天候状況を把握するため、ウェザーニューズ社の気象システムを取り入れ、気象の専門家とホットラインを築いています。当然ですが、災害のたびに従前の安全基準は古くなるため、有事対応のたびにクラブ間で事例を共有し合い、経験だけに頼らない危機管理体制の確立を進めています。 一方で、有事のときにこそ「いつもどおりに」サッカーがそこにあり、クラブやJを通じたつながりを感じられることは、安心につながります。募金活動をはじめ、選手がサッカー教室を開いたり、サポーターの有志がボランティアや物資支援やメッセージを届けたりするなど、クラブの垣根を超えたつながりが生み出すJリーグのネットワークは、かけがえのない財産です。こうしたさまざまなつながりを守り育むためにも、日頃からの安全・安心の追求はあきることなく追求し続ける最重要のテーマです。2019シーズン総括COMMENTSCHAIRMAN COMMENT85

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