2019
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■ まずはマーケティング担当の役割を教えてください。川崎:集客やファンづくりはフットボールとマーケティングのかけ算の結果だと思っており、マーケティングの仕事は、フットボールに対してかけ算する係数だと思っています。 永井:そうですね。お客様が来てくださるかどうかはチームの成績に直結している部分はあるので、好調のときにそれをいかに大きくするか。低調なときにはいかに影響を小さくすることができるかにマーケティング部門の真価が問われると思います。■ 今シーズンは両クラブとも集客が好調です。川崎:やるべきことを忠実にやっているだけなので、特に面白いことは言えないと思いますが・・・。フットボールの面では久保建英選手(当時)の存在が注目度を高めてくれましたし、首位争いの影響もあります。私たちはそのようなチームのプラス要素をさらに増幅させるために、次の試合はこういう試合ですよ、こういう選手に注目してください、という情報をファンの皆様に毎試合きっちり届けるという流れをつくってきました。多摩川クラシコ(川崎フロンターレとのダービーマッチ)では、川崎フロンターレさんとはお客様の層が少し違うので、FC東京のホームゲームではエンタ-テインメント色を押さえてフットボールの真剣勝負であることを前面に出し、過去の歴史を添えながらファン・サポーターの皆様に訴求しました。そういった効果が堅実にでてきたのではないでしょうか。永井:マリノスもチームが好調であることがプラス要因となっていますが、それだけでなく、過去から一つ一つの不満要素を解消してきた結果として今があると思っています。■ 不満要素の解消というと何でしょうか?永井:不満要素というのは、お客様がスタジアムに訪れたとき、サッカー観戦が嫌いになってしまうマイナス要素のことで、改善すべきものです。一例として過去にあったのは、スタジアムグルメの待機列の問題がありました。平均来場者3万人をカバーするには場内売店だけでは足りなくて、キッチンカーでカバーする必要があるため、今年は思い切って広場でのイベント数を減らし、キッチンカーの台数を増やしました。デジタルになってより客観的にお客様の声を聞くことができるようになりましたし、愚直に向き合って一つずつ解消することが重要だと思います。川崎:ファン・サポーターの方に聞くと、初めて行った試合の勝敗って意外と覚えていない人も多いんです。その代わり、そこで体験したマイナスの要素は良く覚えていて「あちこち長蛇の列でトイレすら満足に行けませんでした」といったことが記憶に残ります。トイレや待機列など、本当にベーシックなところを一つ一つクリアにしていくことが重要なのですが、JクラブはPDCAを回すチャンスがリーグ戦ではホームゲームの年17回しかないので改善の精度をあげていかないといけません。■ Jリーグの興行の側面について、どのようにお考えですか?川崎:私たちは、ディズニーランドやUSJとは異なりフットボールを生業にしていますから、それ以外のイベントだけで戦最終節までもつれる白熱した戦いが繰り広げられた今シーズンの明治安田生命J1リーグは、過去最多の平均20,751人のお客様にご来場いただいた。今年はラグビーのワールドカップなどのメガイベントにスポットが当たりリーグの集客は苦境が予想されたが、終わってみると特に首都圏のクラブを中心に集客努力が実った。中でもFC東京と横浜F・マリノスはチーム成績だけでなく集客でも突出してリーグを活況に導いている。今後さらに多くのお客様にファンになっていただくためには、クラブとリーグはどういった連携ができそうか。東京フットボールクラブ株式会社マネジメントダイレクター兼マーケティング統括部長の川崎 渉さんと横浜マリノス株式会社マーケティング本部 FRM事業部 担当部長の永井 紘さんにお話を伺った。(取材日:2019年10月8日)不満要素の解消に真摯に向き合うことが第一歩クラブの集客に向けた取り組みファンづくりFC東京東京フットボールクラブ株式会社マネジメントダイレクター兼マーケティング統括部長川崎 渉氏横浜F・マリノス横浜マリノス株式会社FRM事業部 担当部長永井 紘氏66

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