Jリーグシンガポール視察 2019 報告書
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おわりに Jリーグシンガポール視察2019報告書 (2019年6月14~17日) 30 おわりに ~スポーツの日常、見習うべきチャレンジ精神~ シンガポールは不思議な国だ。 第一級のエンターテインメントを提供できるアクセス抜群の巨大スタジアムを中心に、この国の多くのスポーツの最先端競技施設が集まり、同時に市民スポーツの場ともなっている「シンガポール・スポーツハブ」。その一方で、まるで町の「広場」のようにゆる~いスポーツ施設を中心とした「タンピネス・ハブ」が、ほぼ同じ時期に完成している。180度違うと言ってよい「スタジアム思想」は、この狭い島国の中でどう共存しているのだろうか―。 2017年夏にオープンした話題の「タンピネス・ハブ」は、プロリーグの会場としては賛否両論あるだろう。 場外からは試合が丸見え、タダ見しても注意すらされない。バックスタンドの図書館からはソファにもたれてガラス越しに無料観戦が可能だ。 「有料試合に不適切」としてアジアサッカー連盟(AFC)の公式試合開催は認められていない。劣悪な人工芝からは黒チップが飛びはね、選手がゴムの上を走っているように見える。チーム更衣室は狭い倉庫。私のようなアタマの固い日本人は、ここで思考停止してしまうのだが、シンガポール人は違った。「でも、ま、いっか!」と。 ベースにあるのは「大勢の人に施設を利用してもらえるなら」という考えに違いない。 試合開始3時間前まで、ピッチにはエア遊具が置かれ、子どもたちが遊んでいる。スタジアムとは言わず、タウン・スクエアと称するこの「中庭」は「開放された公園」なのだ。周囲を囲むのは行政サービスや図書館、病院、映画館。ジムやプール、ランニングコースにボウリング。スーパーマーケット、フードコートに屋上菜園とフルコース。そこに総工費約400億円を投じたと考えると、この多機能複合施設の公共的価値の高さが理解できる。 試合前のピッチを走り回る子どもたち シンガポール・スポーツハブのバッグには 「EXPERIENCE SPORTS」のキャッチコピー

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