Ⅲ.タウン・スクエア Jリーグシンガポール視察2019報告書 (2019年6月14~17日) 18 予約がない場合は、基本的にピッチは一般市民に向けて開放しており、視察時にも親子連れや小学生がピッチ上で遊ぶ姿が見られた。周辺を囲む施設から常に見られる位置にあることから、「ピッチに人がいる状態」をつくり出すことを強く意識しているということであった。したがって、週末に予約が入っていない場合は、何らかのイベントを企画したり、周辺のコミュニティーに連絡してフリスビーやラグビーのサークルの活動に利用してもらうとのことであった。 小さい子ども連れの夫婦がくつろぐ奥で 小学生たちがサッカーをしている ピッチに置かれた子どもの遊具施設 (公式試合の数時間前) 3.ホームスタジアムのシェア (1)1つのホームスタジアムを2クラブで シンガポールサッカー協会(Football Association of Singapore : FAS)の施策の一つである「the shared stadium initiative」の取り組みとして、2019年より、タンピネス・タウン・スクエアは、タンピネス・ローバーズFC、ゲイラン・インターナショナルFCの2クラブのホームスタジアムとなった。 the shared stadium initiativeとは、シンガポールプレミアリーグの8クラブが2クラブずつホームスタジアムを共有する(ホームスタジアムが計4つとなる)という施策である。各スタジアムをよりサッカー中心に稼働させること(ホームゲーム数が倍になる)と、スタジアムのインフラのアップグレード(映像配信システム、スタジアムWi-Fiなど)を集中的に行うことを目的としている。 スタジアムへの投資という側面からは非常に合理的な施策であるが、クラブと地元コミュニティーとの関係やクラブのアイデンティティーといった観点からは反対の声も根強く、FASは、「半永久的な施策であること」を強調している。 (2)半数のクラブがホームスタジアム変更 ゲイラン・インターナショナルFCはタンピネス地区の隣にあるベドック地区のクラブであり、2018年までは同地区内にあるベドックスタジアムをホームスタジアムとしていた。 本イニシアチブによりホームスタジアムが変更となり、イースタンダービーのライバルチームであるタンピネス・ローバーズFCに、ホームスタジアムをシェアさせてもらう形となった。激しいライバル関係というわけでもなかったため、ステークホルダーやサポーターの反発はそれほど大きくなかったようであるが、マーケティング上は当然不利な状態になってしまうため、FASから一定の補てんが行われたとのことである。 2020年以降、このイニシアチブがどのような動きを見せていくのか注目される。 ※換算レートは、1シンガポールドル=78.85円(2019年6月時点)を用いた
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