Ⅱ.タンピネス・ハブ Jリーグシンガポール視察2019報告書 (2019年6月14~17日) 14 ⑤ 施設の管理・運営 施設全体の管理・運営業務はPAが行っている。Town Square(スタジアム)、アリーナ@OTH、Community Auditorium以外のスポーツ施設(スイミング・プール・コンプレックス、チームスポーツホール、フィットネス・ジム、ジョギングトラック、ヘルスラボなど)はスポーツSGが管理・運営をしている。 2.所感 2012年11月1日、「芸術・スポーツを通じてシンガポール国民を鼓舞し、コミュニティーの絆を強化し、ボランティア活動や慈善活動を促進をする」というビジョンのもと、社会開発スポーツ省は文化・社会・青年省(MCCY)として再編された。MCCY傘下のスポーツSGは国民のコミュニティーとアイデンティティーの強化を目的に「Vision2030スポーツマスタープラン」を策定した。そして、同プランのハード面の施策としてSports Facilities Master Plan(SFMP)を打ち出し、スポーツを核としたコミュニティー施設の新設と既存のスポーツ施設の再開発を推進している。SFMPはTier4までの規模別に段階分けされており、シンガポール・スポーツハブはSFMP Tier1に位置付けられ、OTHはSFMP Tier2に位置付けられている。そして、2021年にはSFMP Tier2の施設として「Puggol Regional Sports Centre」がオープンする予定である。 (Punggol Regional Sports Centre完成予想図 :MCCY HPより) 今後、スポーツSGはSFMP Tier2としてスポーツ施設を核とした「コミュニティー&ライフスタイルハブ」を国内の5つのコミュニティー開発評議会区(2区は完成、1区は建設中)への建設を計画している。 ●国民の運動能力の向上と健康増進を図るため最新式のスポーツ施設を提供する。 ●国民がスポーツ観戦およびスポーツ参加できる施設を建設し、良質なレクリエーションを提供する。 ●医療・福祉施設の併設および医療・福祉サービスプログラムの提供により国民の健康管理をする。 ●施設内にショッピングモールや飲食店を複合し、生活面での利便性の向上を図る。 以上により、国民のコミュニティーとアイデンティティーを強化し、国民の生活を豊かにするのがコミュニティー&ライフスタイルハブ建設の目的である。 OTH(SFMP Tier2)に代表される、スタジアムを核としたコミュニティー&ライフスタイルハブの事例は、日本の地方都市におけるスタジアム建設にとって大きな示唆となる。地方においてはスタジアムが多目的に利用され、経営が黒字化することは難しい。また、地方では住民の高齢化による医療費の高騰が社会的課題ともなっている。今後、地方都市におけるスタジアム建設で以下①~⑤の施設の複合化が実現したなら、スタジアムを中心に地域住民の交流を活性化することができ、また、上質なレクリエーションを提供することもできるのである。 ①地域住民が気軽に利用できるスポーツ施設(フィ ットネス・ジム、スイミング・プール、インドア・アリーナなどと各種スポーツ教室) ②公共施設(図書館、コミュニティーセンター、行政サービスセンター、カルチャースクールなど) ③医療・福祉施設(ヘルス・ラボ、クリニック、リハビリセンター、高齢者ケアセンターなど) ④商業施設(ショッピングモール、飲食店など) ⑤エンタテインメント施設(シネコン、劇場など) さらに、地域住民の「健康づくり」にも貢献することができ、地域社会においてスタジアムが住民にとって「なくてはならない施設」となり、その存在意義と存在価値は各段に高まるのである。
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