2019/6(Vol.272)
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2vol.272 28 Jun. 2019シャレン! クラブの現場からSIB活用で地域の健康増進に寄与徳島ヴォルティス ホームタウン推進部 谷 直和 昨年11月、徳島県美馬市、大塚製薬、徳島ヴォルティスの三者は、健康増進に関する連携協定を結んだ。活動の対象は市民1800人で、期間は5年。徳島のコーチ陣が、参加者の運動習慣化に取り組んでいる。 プログラムは徳島のコーチや専門家がコンディショニングのノウハウを住民向けに設計した週1回の集合トレーニングと、自宅で最低週1回のトレーニングを行い、その後に大塚製薬の「ボディメンテ ゼリー」を摂取し、疲れた体を修復してもらう。さらに、1週間ごとにICライフレコーディングを行うという試みを行っている。 その際、KPI(Key Performance Indicator、成果指標)は二つ。運動習慣のない人の運動習慣化と、65歳以上の基本チェックリスト5項目のうち3項目の改善である。ことし2月には美馬市職員にも実施。数年前に大病を患った方が、8週間で姿勢改善の効果が見られたという。 この取り組みで注目されるのは、参加者のコンディションや運動習慣など、あらかじめ定めた目標が達成されたことを確認し、成果連動分を支払うというソーシャルインパクトボンド(SIB)の活用。ホームタウン活動で介護予防や医療費削減などを考える中、地域共通の課題に向けて連携して取り組むことができるのがSIBであるという認識に至った。ホームタウン活動から前進の必要性ツエーゲン金沢 ホームタウン推進室 灰田 さち ホームタウン活動は、キッズキャラバン、幼稚園の訪問サッカー教室、金沢市から委託された小学校のサッカー教室などを実施している。昨年限りで選手生活を引退した辻尾真二がクラブアンバサダーとなり、小学校での職業講話なども行っている。 こうした活動の中から、昨年は金沢BFCという北陸初のブラインドサッカーチームが立ち上がった。運営には関わらないが、クラブ名を冠した活動で、広報や備品提供などでサポートしている。また、クラブのパートナーである病院の事務局長がツエーゲン金沢のファンという縁で、精神疾患患者のためのサッカー教室にスクールのコーチを年4回派遣。コミュニケーションの苦手な患者たちが次第に笑顔を浮かべ、病院のスタッフもやりがいを感じているという。 こうした活動を昨年は276回実施したが、やはりホームタウン活動の枠内にとどまる。他の団体と連携するシャレン!には至っておらず、そこは何とかしたいと思っている。サンフレッチェ広島で働いていた際、Jリーグや広島カープの優勝など、スポーツが地元に元気、活力を提供できるのを肌で感じた。ツエーゲンもそうありたいし、そのためにはシャレン!が欠かせないと個人的には思う。昨年はそれができなかったことに、もどかしさを感じている。「同窓会」という名の合同企業説明会ヴァンフォーレ甲府 クラブマネジャー 長田 圭介 昨年、出会った明治大学の学生たちと共に、形にできたものがある。それが「キャリスタ同窓会」で、昨年10月にアルビレックス新潟とのホームゲームで実施した。地元に戻って就職したいが、なかなか地元企業と接点のない学生と、そうした学生との接点が欲しい地元企業。両者のニーズに応えるため、クラブが学生たちのアイデアを採用し、Jリーグを使って実現した、いわばスタジアムでの合同企業説明会だ。 ヴァンフォーレ甲府には、地元企業を中心に約300社のスポンサーがある。通常の企業説明会とは異なり、並んで試合を観戦しながら会社についての話がフランクにできるような空間づくりに努めた。そのため、企業には入社1~2年目の、学生と年齢が近い社員の参加を要請した。 準備期間は少なく小規模ながら、企業からは好評だった。通常の企業説明会などではどうしてもかしこまってしまいがちだが、試合を見ながらだと普段できない話もできた、といった感想もいただいた。 課題は、私一人で動いていることもあるので、どうしてもパワーが不足がち。スタート時に枠組み、関わる人、組織を整理できていれば、もう少し違った現在があったかもしれない。それでも、伝えたいのは「まずはやってみよう」ということ。やってみて初めて分かることもある。ボランティア体験をその先のステージへ川崎フロンターレ スポンサーセールスグループ 鈴木 順 障がい者の就労体験を2014年から実施している。ボランティアとしてクラブ運営に携わってもらっていたが、その先のステージに上げたいということで、ことしは体験活動自体にスポンサーを付ける取り組みをスタートさせた。経営面を考えるとマインドだけでは済まないところがあるので、結果を出したいと思って企画を立ち上げた。 幸い、学生時代のサッカーの先輩が社長を務める2社がスポンサーになってくれた。社長に言われたのは「こういう活動を自分の会社がしていることが、社員に対する誇り、プライドになる」。それがすごくうれしかった。そういう力がシャレン!にはあることをクラブの皆さん、クラブの周囲の皆さんに知ってほしい。 活動がどれだけ志が高く、どれだけ思いが熱く、どれだけの人を笑顔にしたくて、そういう思いがどれだけあるか。熱い思いがあるのか、やりたいのか、やりたくないのか、それだけで十分。そうすると、周囲に人が集まり、面白いことが始まる。でも、誰かが手を挙げて動かなかったら、何もスタートしない。止まっていたら後退と同じ。やりたいと思ったら、一歩踏み出そう。 これまで多くの失敗もあったが、やって良かったことはたくさんあるし、これからも続けていきたい。Jリーグ、Jクラブを使って、日本が笑顔と感謝の増える国になったらうれしい。シャレン!スケジュールシャレン!提案フォームオープンJリーグをつかおう!第1回ネットワークミーティングシャレン! キャンプシャレン!キャンプシャレン!アウォーズ5月    6月    7月    8月    9月    10月    11月    12月    1月    2月シャレン!提案ブラッシュ  アップ提案エントリーエントリー2019年に企画提案・実施されたアイデアや活動を全国のクラブと共有し、表彰するイベント実践実践Jクラブと一緒に話し合いながらアイデアを広げ、深めるワークショップ申込締切ブラッシュ  アップ2019「Jリーグをつかおう!」 第1回ネットワークミーティング開催 「Jリーグをつかおう!」第1回ネットワークミーティングでは、シャレン!に関するJクラブからの報告も行われた。既に活動を開始して成果を挙げているクラブもあれば、課題に直面し、試行錯誤の段階のクラブもある。さまざまな立場からの報告は、これからのシャレン!を考える上で大いに参考になるものばかりだった。

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