目に見るスポーツがメジャーリーグベースボールではなくJリーグということも興味深いです。複数デバイスでの視聴者が全体の30%以上を占め、いつでも、どこでもJリーグが楽しめる環境が整備されてきました。スタジアムJリーグは、長い時間をかけてフットボールスタジアムの整備に取り組んできました。競技場からフットボールスタジアムへ、興行主として、アスリートだけではなくゲストを迎えるにふさわしいホスピタリティーが整った施設へ、そして、防災訓練など市民が集まり街のハブとなりうるインフラを備えた施設へ向けて、メッセージの訴求と実際の整備支援の両面に取り組んでいます。フットボールスタジアムの割合は、プレミアリーグが100%に対し日本は半分ほどです。通信環境やテクノロジーを顧客体験の向上につなげる発想や企画力は、競技場からは生まれにくいかもしれません。Jリーグは理想のスタジアム要件を掲げました。アクセス、屋根、ホスピタリティー、フットボールスタジアムの4つです。2018年は具体的に、Jリーグが示す理想的なスタジアムの要件の整備するクラブには、クラブライセンスのスタジアム基準に猶予期間を持たせる改定を検討するなど、フットボールスタジアムの整備の推進を図っています。経営人材の育成経営人材の育成を目的に設立したJリーグヒューマンキャピタル(JHC)は16年にスポーツヒューマンキャピタルへスピンオフしています。JHCを含めて1期から6期までで186人が受講し43人がスポーツ関連団体へ転出しています。スポーツ庁、Jクラブ、プロ野球、BリーグやTリーグなど、多くの人材がスポーツビジネスに目を向け挑戦できる土台ができつつある印象です。スポーツの現場は、経営パフォーマンスやソーシャルグッドに加え、競技上の成績も求められます。選手がトレーニングとホームタウン活動をどのくらいのバランスで取り組むのかといった、コンフリクトする問題には、さらにその上位で実現したい共通のビジョンを示すことで、高い水準で矛盾を乗り越えられると考えます。そうしたコンフリクトする問いに対して、意欲的に課題解決ができるプロフェッショナル人材が、スポーツ界の内側でも活躍できる環境づくりが次なる課題です。前述のとおり、これまでは主に5つの重要戦略を進め、リーグが成長する土台づくりを行ってきました。25周年を機に、改めて実行委員や理事と共に実現したいビジョンを整理しました。本書でもご案内した「2030年に目指す姿」です。周年事業としてセレモニーを行わず、市民300人を集めたワークショップ「Jリーグ25周年未来共創『Jリーグをつかおう!』ワークショップ」を都内で開きました。「未来共創」で示すとおり、Jリーグやクラブが社会との連携のために自らを開き、スポーツの価値を知り、地域を良くしたいと願う市民と協働で地域を良くするアイデアを出そうというチャレンジです。サッカーそのものや、Jリーグ自身をどのように社会に開いていくか。この問いに向き合い、Jリーグは次の25年を歩んでいきます。最後に、今シーズンを過ごしたJリーグを支える全ての方々へ、心よりお礼申し上げます。また来シーズン、スタジアムでお会いしましょう。3.2030ビジョン8903COMMENTSチェアマン総括 | 村井 満
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