ビットコイン、イーサリアム、リップル・・・これらを聞いてピンとくる方も多いのではないだろうか。2017年にその高騰が話題となったブロックチェーン技術を用いた仮想通貨である。現在、様々なスポーツにおいて、にわかファンをロイヤルカスタマーであるコアファンにしようと顧客体験の向上を図る施策が検討されている。このブロックチェーン技術を用いた仮想通貨をスポーツビジネスで活用し、顧客体験の向上を図っている事例がある。国内では、エンゲート株式会社がブロックチェーン技術を用いた投げ銭コミュニティサービスの提供を開始している。これはファンがコミュニティーサービス内で仮想通貨を購入し、その仮想通貨を試合やライブ配信などのコンテンツを通して、応援するクラブや選手に贈り、クラブや選手は換金後にキャリア支援の一環として活用するとともに、投げ銭からの把握できるファンの興味等の情報をマーケティングデータとして活用し、さらなるサービス展開やマーチャンダイジングに役立てられるといったものである。投げ銭を通じてファンとクラブの絆を深め、より楽しく応援することができるようになる顧客体験の向上を図る仕組みである。また、海外ではNBAのオーランドマジックがシーズンチケットホルダーに対してシーズンチケットを他のサービスなどに活用できるマジック・マネー・アプリケーション・プログラムを実施して顧客体験向上を図っている。マジックマネーはクラブのアプリをダウンロードしたシーズンチケットホルダーのみが利用でき、使われないシーズンチケットを座席のアップグレードや選手サイン会、ロッカールームツアーといったイベント参加など他のサービスへ活用することで顧客体験の向上を図る仕組みとなっており、ファンの消費パターンなどのデータ取得も可能にしている。一方、これら顧客体験の向上の源泉となるのはクラブやチーム、選手のほかに動画やイベントといった魅力的なコンテンツである。現在、試合のライブ配信やイベントの動画配信など、クラブ単位でのコンテンツが数多く制作されているが、今後はデジタルのさらなる発展により誰もが簡単にコンテンツを制作出来るようになり、選手自身が自分をプロデュースし、選手のプレー目線での動画などコンテンツがパーソナライズ化され、より顧客体験の向上に資する魅力的なコンテンツが制作されるのではないかと思われる。選手が自身をブランディングするとともにコンテンツを生み出し、それにファンがついてきて、個人が選手に対して仮想通貨等で投資をするといった時代が来るかもしれない。Jリーグでも公式アプリ「Club J.LEAGUE」により、ソーシャルマネー等を活用した顧客体験の向上施策が実施されているが、よりパーソナライズ化したコンテンツを創出し顧客体験の向上を図るためにJリーグが選手を支援してもいいかもしれない。来るべき時代にふさわしい顧客体験の向上を目指し、コンテンツのパーソナライズ化も進めてほしい。顧客体験の更なる向上へ8303COMMENTSDeloitte Tohmatsu’s Eye
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