2018
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マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て09年フィールドマネージメント設立。航空、自動車など日本を代表する企業の経営コンサルタントを務める。スポーツでは東北楽天イーグルスや北海道日本ハムファイターズ、湘南ベルマーレなどの経営に携わり16年よりJリーグ理事(非常勤業務執行役員)©J.LEAGUE有識者インタビュー木 裕太Yuta Namiki並木 裕太Jリーグ専務理事木村 正明木村:まずはJリーグのファンを増やしていくために何ができるのかというテーマでお話を伺います。フットボールクラブの経営を行うなかで、よくワールドカップイヤーは盛り上がっていいよね、と言われるのですが、実はJリーグファンと代表ファンとは異なりますよね。当然、代表チームの人気も不可欠ですが、Jリーグはコア層に支えられており、コア層をどう広げていくか、コア予備群をどうコア層に引き上げていくかを議論していく必要があると思っています。そのあたり、並木さんから見ていかがでしょうか。並木:Jリーグの観戦者に関するレポートを読むと、ここ数年は公式試合に延べ1,000万人強が来場していて、ユニークで言うと、計算の仕方にもよりますが、コア層は200万人くらい来ています。加えてDAZNの加入者は公式に100万人以上。仮に、半分の人たちがいつもJリーグを見てくれているとすれば50万人くらい。つまり、200万人は来てくれていて、50~100万人くらいがDAZNで見てくれる人だとしたら、約300万人で日本の人口の2%強ですよね。これを60~70%にもっていくよりも、98%に着目する方が伸びる余地は大きいかな、と。ですが、いまのJリーグの理事会のアジェンダや施策の多くは、まだ2%~3%のコアなファンの人たちに向けたものが多いため、そのパワーの半分くらいをコア層以外の潜在的なファン層に向けるだけでも変わると思います。木:より深くJリーグのファンになっていただくことに加え、潜在的なファン層にアプローチするためのアイデアなどありますか。並:一つのアイデアですが、新たな市場で20%、30%シェアを誇るようなヒットを生み出した経営者たちにボード入りしていただきたいですね。今、Jリーグは外の知見を積極的に取り入れようとしています。ですからこの領域でも外の知見を入れる。しかも、ここ数年のうちにそれらを成し遂げた方々に参加してもらいたい。最近は、企業を経営しながらサッカークラブも経営する、ハイブリッド型の経営者たちも増えてきました。彼らはプロの経営者ですから、ビジネスモデルの成り立たせ方を分かっているので、きっと、Jリーグにファンが集まるヒントやビジネスチャンスに示唆をいただけます。月例の理事会で、10分ずつ話をしていただければ、非コア層である98%の人たちへのアプローチにリソースと時間を使えるようになっていくのではないでしょうか。 観に来てくれる方が増えると、当然ファンの拡大につながります。現在の理事会は、確かに場はオープンですが、構造上は、事務局案を決議する場となっています。すると、外部から来る社外理事、つまり、Jリーグが今後、理事会に参加してほしい人たちに限って貢献しづらいんですよね。合議も当然大切ですが、経営課題に直結する知恵を得られる場として、理事会のスタイルを見直す時期に来ているのではないでしょうか。スポーツ市場の開拓に必要な人材とは今春、新たにJリーグの事業・ビジネス分野の専務理事として着任した木村 正明が、ビジネスやクラブ経営に豊富な経験・知見を有する並木 裕太理事にJリーグがさらに拡大するための示唆を仰ぎました。様々なプロフェッショナルの力を結集して取り組む6402MANAGEMENT STRATEGYFor Fan&Customer施策戦略の全体像有識者インタビュー

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