原 博実Hiromi Haraので、それはとても良いことです。選手の強さを決めるのは、何かしら、自分を世界に見せてやるという野望です。もしこの感情がなければ、100年後、日本のサッカーは、ただの遺跡になっているかもしれません。原:そうした意味では指導者の挑戦も同じで、例えばドイツ、イングランド、スペインといったヨーロッパのトップの環境で監督をやる人が出てきてほしいと思います。労働環境や言葉の関係でなかなか難しいですが、そこへもう一歩踏み込めればと思っています。オ:とても良い案だと思います。監督ではなくとも、コーチでもよいので、そうした立場の人が外国のチームに自分から申し込み、勉強させてもらう環境を作っていくことが大事です。原:Jリーグとしては、世界のプレーヤーが競争できる場所となることでJリーグのレベルが上がり、日本サッカーの強化に繋げたいと考えています。オ:もし全てのチームがフェアに外国籍選手を入れるだけの経済力があればそれは問題ありません。しかしそうした選手を買えるチームと買えないチームがあるのであれば、差が付きすぎて問題になってしまいます。選手を買うのではなく、自分たちを外国に売ることを優先したほうがいいかもしれません。Jリーグ自体を海外の選手と日本人選手を競わせるやり方は確かに興味深いです。しかし、今の日本の良さを殺してしまわないようにしなければなりません。今、ようやく日本サッカーは面白くなってきたのです。ここで終わりにしてはいけません。ようやく世界に日本という名前を知らしめたのであって、それをキープする必要があります。日本のアイデンティティーをなくしてはいけません。原:アイデンティティーを育む土壌を同時に整えたいと思います。外から来た選手からアイデンティティーを教わることもあると思うのです。日本人選手がヨーロッパに行くのは、より競争力のある高いレベルでの挑戦です。無理に引き留めることは出来ません。一方で、国内でも世界の選手達と勝負できる環境を整えたいです。オ:よくわかります。しかし、それだけでは不十分です。日本には非常に優秀な選手が沢山いますが、発掘力が足りない。とにかく才能のある人材を発掘する。世界が日本をどう評価しているかをきちんと調べてもらえばわかると思いますが、「世界は今、日本を脅威に感じています」。日本人はどれだけ頭が良いか、進歩する力を持つか、そしてどれだけ努力するかといったことを知り始めているのです。そうした日本人選手を発掘し、伸ばしていくことこそ大事で、今ある波を変える必要はあるのか、私には答えられません。ただし、日本の選手たちを成長させる上で、外からの影響を、もしくはちょっとした嫉妬心を備えさせて、自分自身の見返したいというやる気を起こさせる意味では、外国人選手を時々入れて、刺激を与えるのは悪くないと思います。原:はい。Jリーグは、トップチームの競争力アップと同時に育成に力を入れ、この育成・発掘に力を注いでいきます。オシムさん、今日は色々と貴重な意見をありがとうございました。オ:私は日本人のこと、よくわかっていたでしょう?今日はありがとう。5302MANAGEMENT STRATEGYFOOTBALL施策戦略の全体像有識者インタビュー
元のページ ../index.html#55