本日のテーマは「Jリーグは誰のもの?」という問いです。傍士:いきなり覆してしまうようですが、私は、Jリーグは誰のものでもなくて「思想」だと思っています。講演で全国各地へ呼ばれてJリーグの話をするときには、同じ思想の持ち主に訴えかけるような心持ちで臨みます。どういうことかというと、私の故郷は高知で、野球が盛んなのですが、Jリーグの話をします。そのとき、高知を応援したくない人は手を挙げてください、って講演の最初に言うんですよ。でも誰も手を上げないんで、じゃあ、いまからそういう話をしますって言って、Jリーグの話をします。すると、サッカーに関心のない人も、ちゃんと聞いてくれます。静岡に行った時も、磐田のナンバープレートを付けるのと、ジュビロ磐田が地元にあるのは同じことですよ、と。そうすると、興味をもってくれるんですよね。米田:同じ町を愛する人に訴える、ということですか?傍:そうです、そうです。これ(写真・Jリーグ百年構想の初代ポスター)が出たのが1996年で、「あなたの町にもJリーグはある」って、書いてあります。単にサッカークラブがあるのではなくて、わがホームタウンを愛する、という思想だと感じ取ったんですね。去年、Jリーグに昇格するヴァンラーレ八戸の試合を見に行った時、異様な集団がいたんですよ。ユニフォームを着ていて。何だろう?と聞いたら、「同じ八戸代表で、私たちはアイスホッケーチームなんです」と教えてくれました。サッカーだけではなくて、アイスホッケーの選手たちも、当たり前のようにクラブに応援に来ていて。素晴らしいなと思いました。米:川崎フロンターレの試合へ行ったときに、同じ光景をみました。アメリカンフットボールの人たちが来ていて。聞くと、サポーターはフロンターレのユニフォームを着て、違う競技を見に行ったりもしているそうです。傍:そういう時に質問されたら、「Jリーグですから当たり前じゃないですか」って。そういう感覚で、Jリーグのことを捉える人がふえるといいな、と思ったんですよね。選手、クラブもみんな含めて「Jリーグだから当たり前ですよ」といかにふるまえるか。そのとき、ホームタウンというものがベースになりますよね。商圏だとか、そういうことではなくて。今、ホームタウンのエリアについてクラブ間で議論がされてますよね。議論を継続していくなかで、一人一人が「私のJリーグ」高知生まれ。1980年日本開発銀行に入行、日本政策投資銀行地域企画部参事。Jリーグ理事、日本サッカー協会国際委員などを歴任し、地域愛あふれる風景の大切さを伝えスポーツと地域の関係を追求。著書に「百年構想のある風景―スポーツ文化が国の成り立ちを変える」©J.LEAGUE受け継がれる「J」のDNA有識者インタビューJリーグの経営基盤強化と社会連携分野の業務執行を担う米田 惠美理事が、Jリーグの創設以来、百年構想の具現化に真正面から取り組まれている、大先輩である傍士 銑太氏に、Jリーグが真に社会に開いた存在となるためのヒントを尋ねました。士 銑太Senta Hoji傍士 銑太Jリーグ理事米田 惠美傍士さんが大切に保管されている雑誌の切り抜き。Jリーグが百年構想を掲げたばかりの1996年に作った公式ポスター。Jリーグは誰のもの?4402MANAGEMENT STRATEGYFor Community施策戦略の全体像有識者インタビュー
元のページ ../index.html#46