2018/9(Vol.265)
5/8

5vol.265 13 Sep. 2018グの開幕でした。テレビ観戦ではありましたが、国立競技場がカクテルライトに照らされて、春畑さんが生演奏して、その映像にくぎ付けになりました。当時はサッカーと音楽というと、チアホーンの甲高い音色とサンバのリズムだったから、ギターで奏でられたこの曲が衝撃的だったのを覚えています。開幕セレモニーの演出も印象的でした。川淵 本当に感動的だった。春畑 開幕セレモニーは、演出担当の方と入念な打ち合わせをしました。何分何秒でチームフラッグがスタジアムを一周して、いつ心臓の鼓動の音が始まって、マスコットが何秒で膨らむか、それこそ秒刻みで。川淵 前の日は雨でリハーサルも完全にできなかった。だから実際に見たのは当日が初めて。皆さんと一緒ですよ。それでこの曲を演奏してもらって「ほらみろ、こんなに良い曲ができたぞって」。僕が作曲したかのように、威張ってました(笑)。春畑 そうやって準備したこともあるので、自分にとっても思い入れが本当に強い曲です。村井 セレモニー以外では、僕はこの曲に癒されていたという面もあるんです。応援するクラブが負けてがっくりきた夕方に、スタジアムに流れていたこの曲が重なって、そして少しずつ心が落ち着いていく。当時のシーンを思い出すと、この曲がセットになっていますね。春畑 皆さんの思い出の一部になっているというのは本当にうれしいことですね。村井 今回、Jリーグが25周年を迎えて「本当に変わらないもの、変えなければいけないもの」を議論しているときに、次の25年に向けて再スタートを切るという意味で、リアレンジをお願いしてみようという声が上がったんです。春畑 今回はテーマとしていただいたのが「変わるもの」と「変わらないもの」。リアレンジすると、オリジナルの良さが失われて「えっ、変えてしまったの」と感じることがあると思うのですが、変わらないものとしてメロディーとギターのトーンは変えずに演奏し直して、変わるものとして25年前にはなかったシンセサイザーの音やリズムを入れて未来に向かっていくイメージを出しました。川淵 詳しいことは分からないけど、今の時代に合ったリアレンジということでしょうね。春畑 リアレンジするにあたって、僕の地元のFC町田ゼルビアや浦和レッズの試合を見に行かせていただいたんです。試合前に親子でボールを蹴って遊んで過ごす姿も見て、「ああ、こうやってサッカーに触れて育っていくんだな」と、また改めて感じることがあって。もっと未来につながっていくイメージを曲に込めたいと思ったんです。村井 川淵さんがJリーグ百年構想を掲げられて、25年の節目で春畑さんにリアレンジしていただけた。今後も50年、75年、100年とこういう機会を設けたいと思っています。川淵 それはすごい。僕はこの曲をずっと使っていきたいと言っていたんですよ。Jリーグのイメージを広げていく意味でも本当に価値があったしね。春畑さん、どうですか。春畑 ぜひ喜んで。川淵 それにしても、10クラブでスタートしたJリーグが25年後に54クラブにまで増えるとは想像していなかった。当時、言っていたのは「10年後には16クラブになっているかもしれない」ということぐらい。25年後はどうなるかなんて、全く話していなかった。そういう意味では、チェアマンはじめ多くのクラブ関係者の努力があってここまで来た。村井チェアマンをはじめ多くの関係者の努力のたまもので、本当に感謝しています。春畑 ほぼ全ての都道府県にクラブがあるって、本当にすごいと思います。僕は町田市出身なんですけど、そこにもクラブができるって聞いたときにはものすごくうれしかった。試合に行ってみたらやっぱり、地元のチームを応援したくなりますね。村井 川淵さんは謙遜されますが、クラブが全国に広がることは最初からプログラムされていますよね。Jリーグの理念に「国民の心身の健全な発達への寄与」とある。10クラブでは国民に寄与できませんからね。僕は「国民の」という言葉を使ったというのは、百年構想にあるような緑の芝広場を日本中に作るとか、ちゃんと設計図に描かれていたというイメージですね。地域密着を掲げながら25年がたち、クラブの数も増えてきましたが、今後は個々のクラブが地域にもっともっと深く入っていくとか、地域と共にいろいろな問題や課題を共に乗り越えていくとか、そういう存在になっていければと思っています。地域に根差すとか、地域密着というのは全く変わらず、それをもっと深化させようと。今回の曲も骨格は変わらないわけで、そんな心根ですね。何か違うことをやるわけでは全然ないと思っています。春畑 これからもさらに発展するJリーグに、この曲の進化のイメージがしっかり重なって、また皆さんに親しまれる曲になっていったら本当にうれしいです。サッカーファンだけでなく、TUBE のコンサートに毎年来てくれるファンの方も「『J’S THEME』 がすごく好き」と言ってくれて。今後もずっと、自分のライブでも大切にしていきたい曲です。川淵 ところで、リアレンジしてからスタジアムで演奏しましたか。春畑 いえ、まだです。川淵 地元だし、ぜひ町田のスタジアムで、いや、54クラブ全部で演奏するべきでは。※8月26日に町田市立陸上競技場で演奏(写真右)春畑 サポーターの皆さんの前で弾くのは、TUBEのライブとは別の緊張感があって、特別な思いがあります。川淵 それなら、全国スタジアムツアーだね。村井 生で聴くとまた感動の度合いが違いますから、ぜひ大勢の方に聴いていただく場をつくりたいと思います。春畑 ぜひ、お願いします(笑)。1993年5月15日にJリーグが開幕以来、Jリーグオフィシャルテーマソングとして愛されてきた、ギタリスト春畑道哉の代表曲「J’S THEME(Jのテーマ)」。Jリーグ25周年の節目に、メロディーはそのままに再レコーディング&リアレンジした新バージョンが誕生!新バージョン+廃盤となっていた8cmシングル&ミニアルバムを新たにリマスタリングし、春畑道哉のJリーグ関連ソングを収録した “Jリーグ25周年記念アルバム”を8月22日にリリース!!ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズAICL-3534~5 1993年5月15日、Jリーグは「J’S THEME」のギターの調べと共に幕を開けた。それから25年、Jリーグの歴史と歩んだ名曲のリアレンジに際し、Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎日本サッカー協会相談役、ギタリストの春畑道哉さん、村井 満Jリーグチェアマンにそれぞれの思いを語り合ってもらった。※「Jリーグ25周年記念アルバム」に付随の「J.LEAGUE 25th Anniversary BOOK」に収録されている三者鼎談(2018年5月24日実施)を再構成未来に向かうイメージを大切にしていきたい曲初回生産限定盤https://smar.lnk.to/6y1gDIAアルバム特設サイトhttp://k.tube-net.com/haruhata_jstheme/©柴田恵理鼎談時に春畑さんが「J’S THEME(Jのテーマ)」をアコースティックギターで生演奏した様子はこちらからhttps://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=jvRAAPGAnlU

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る