4vol.265 13 Sep. 2018川淵 春畑さんには本当に名曲を作ってもらって、ありがとうございます。村井 本当に素晴らしい曲です。Jリーグも、この曲と共に25年歩んできたと言えますよ。春畑 最初にお話をいただいたのがJリーグ開幕前ですから、25年以上前のことです。これからサッカーがプロ化されて、華やかなスタートを切る。そのプロサッカーのテーマソングを制作してほしい、というお話は光栄でした。川淵 実は、僕が最初にイメージしたのは、歌詞の付いた曲だったんですよ。MLB(メジャーリーグベースボール)のスタジアムで、みんなで歌う「私を野球に連れてって」のように。村井 そこからどういう経緯でこの名曲が。川淵 周りの人の話を聞いたら、歌詞があると時代が透けて見えたり、長く使用していくには難しい面があるからメロディーだけがいいのでは、という意見が出てね。そこで春畑さんにお願いすることになったわけです。春畑 何曲か書かせていただいたんですが、その中で「J’S THEME」に決まりました。川淵 デモテープを聞いたときに、すぐに「これでやってくれ!」と。衝撃というか、ギターの音色がとにかく印象的で、誰に相談することもなく即決でしたね。Jリーグの開幕セレモニーで僕は、歌手の方に「君が代」を歌ってもらいたいと考えて、前田亘輝さんが候補に挙がったんです。僕は前田さんのことをよく知らなくて、偉そうに「まずアカペラで歌ったデモテープを送ってほしい」なんて言ってね。それでテープが届いて聞いてみたらもう「これだ!」と。そのタイミングで春畑さんからも曲が届いて、こちらも即決。ただ僕は、春畑さんと前田さんが同じグループ、TUBEの方だとは知らなかった(笑)。春畑 そんな経緯があったとは(笑)。曲のどんな部分を気に入っていただけたのでしょう。川淵 とにかく、誰が聞いても親しめる曲だと思ったんです。静かなスタートからだんだん盛り上がっていく、そこがまたいい。この曲を聴くと毎回ジーンときてね。自然と涙が出てくる。今、スポーツの世界でこういうテーマミュージックが定着している競技は少ないのでは。そういう意味では、本当に価値がある。それと、若い人たちがこの曲を聴いてどのような感想を持つのかも知りたいね。村井 今でも人間の五感はそれほど変わらなくて、サッカーはボールを蹴る、ゴールが決まるということだけではなく、スタジアムで五感いっぱいに感じる。カラフルで、カクテル光線もきれいだし、芝生も緑で、こういう音楽が耳から入るなど、全身で感じることができるサッカーは、当時の若い人たちをとりこにした。それは今でも全然変わらないと思いますね。曲は本当に感動的でした。春畑さんはどんなイメージを持って制作したのですか。春畑 サッカーは、攻撃的で熱く戦うスポーツというイメージだったので、実は最初はロックな激しい曲を制作していたんです。でも実際に試合を見に行くと、すごく感動したのと同時に「それだけじゃないな」と思いました。勝ったチームだけじゃなくて、負けたチームが存在して、そのチームを応援する人たちがいる。試合に至るまでのきつい練習や努力、いろんなものがあることに気づかされました。それらも曲の中に表現したいと思ってこのメロディーをつくり、そこに躍動感や広がりのあるリズムを加えて生まれました。村井 僕がこの曲を最初に聴いたのはJリー名曲誕生から25年そして 新たな四半世紀へJリーグ初代チェアマン川淵三郎×ギタリスト春畑道哉×Jリーグチェアマン村井 満印象的なギターの音色感動的なセレモニーでJリーグ25周年 特別企画 三者鼎談国立競技場で行われたJリーグ開幕セレモニーで、開会宣言文を読み上げる川淵チェアマン(当時)左から川淵日本サッカー協会相談役、春畑さん、村井Jリーグチェアマン
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