戦略的なデータ活用と、生活者への「仕掛け」づくりを Jリーグは今、デジタル戦略やデータの蓄積と活用に力を入れており、Jリーグとクラブが一体になってマーケティング基盤を整備していこうという方向性は良いと思います。ただ、最初に顧客データを整備し、次にそのデータを活用する、というステップの踏み方には注意が必要です。ともすればデータベースシステムだけ立派なものが出来て、使いきれないまま終わってしまうということになりかねません。まずはファン・サポーターにどのような体験を提供し、満足度を向上させたいかという明確なゴールを設定し、そのために必要となるデータを整備する。ゴールオリエンテッドに進めていくことが肝要です。 データ分析においては、蓄積されたスタジアム観戦者のデータを漫然と分析するだけではいけません。必ず仮説をもって検証を進めることが大切です。またJリーグの課題である新規顧客の獲得という点では、すでにスタジアム観戦に来ている人よりもっと幅広い生活者のデータを分析する必要があります。「ゴールオリエンテッド」なデジタル戦略が肝に「才能発見装置」SNSが観戦者増のトリガーに 新規のファン獲得のために、今後さらにデジタルを活用する機会が増えてくると思います。特にSNSはいわば「才能発見装置」です。ある選手がTwitterやInstagramなどのSNSで生活や人となりを発信し、注目が集まれば、その選手を一目見ようとスタジアムに来る人が増えるかもしれません。選手個人のSNSがJリーグを観てもらうきっかけになるのです。いわばタレント、スターの誕生です。 これからの取り組みとしては動画配信も重要。サッカーは見せるスポーツですから、触れる機会をたくさん用意する必要があります。多様な配信を認め、「仕掛け」をつくることでJリーグに触れてもらう。そうすることでJリーグに対する世間一般の興味・関心がぐっと高まるように思います。 Jリーグは、開幕から23年間、地元密着のコンセプトのもと全国にしっかりとした基盤を作ってきました。これは大成功と言えます。ただ、この先の20年間も同じことをやっていれば良いわけではありません。今はちょうどその転換期にあり、2015年はそのトレンドを変えていかなければいけない転機の年だったと思います。日本はこれから人口減少が進み、世界は脅威的なスピードでどんどん変化していきます。Jリーグがこれからどう変わっていくのかに注目しています。Jリーグに一言慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授夏野剛 COMMENTS FROM ADVISERS51
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