2015
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アジアとの連携で世界で戦えるコンテンツに サッカーの特徴である「グローバルコンテンツ」という観点から見ると、Jリーグはブレイクスルーをしてビジネス規模を大きく拡大する必要があると思います。 クラブ収支の推移を見ると過去5年間で継続的に成長しているように見えますが、これはクラブ数が増えていることも要因のひとつ。責任企業からの広告宣伝費等を通じた支援も影響しているでしょう。明確に言えることは、プレミアリーグやブンデスリーガのクラブに比べて、Jクラブの営業収益は規模がとても小さいということです。 コンテンツ産業で怖いのは負のスパイラルに入ること。サッカーで言うと、スポンサーや投資家から資金が集まらない、プレーヤーが海外に流出し、サッカーがつまらなくなり、そしてますます資金が集まらなくなる、という負の連鎖です。これを正のスパイラルに変えるブレイクスルーが必要なのです。 大事なことは、試行錯誤しながら世界のコンテンツ市場で戦える競争力をつけることです。例えば、大都市の中心にスタジアムを建設すれば客層が広がる可能性で投資家は興味を持つかもしれません。または、ファンの関心を集中させるため、クラブ数を絞った世界レベルで戦えるトップリーグを設立する手もあります。「グローバルコンテンツ」としてのJリーグの競争力世界での目標から逆算した戦略立案が鍵 世界レベルで戦う上で、国際戦略はとても重要です。今後の成長を見越し、アジア・マネーを取り込むという今のJリーグの方針は間違っていないと思います。ただし、日本的な「一歩一歩、地道に成長」というスピード感では、世界の潮流に追いつくことはできず、海外リーグとの差は開く一方です。 ビジネスの世界では、各国に1社ずつ子会社を設立して売り上げを積み上げるのではなく、グローバル企業の買収や戦略提携により一気に拡大を進めるケースが増えています。Jリーグにあてはめて考えると、例えば韓国、中国、東南アジアと恒常的に試合をするアジアリーグを設立するのも一案。Jリーグがアジアワイドで価値があるコンテンツになることが必要です。 まず国内、次に国際という順番で戦略を考えるのではなく、グローバル市場やアジア市場での戦略を立てて、それにうまくリンクするように国内の戦略を組み立てる、といった発想が重要です。本稿の章立てに表れているように、国際戦略を最後に付け足して考えているようでは世界での競争に勝つことは難しいです。 2015年に取り組んだ大会方式の変更のような試行錯誤は、常に繰り返していくことが大切です。ただし、Jリーグは世界でどんな目標を目指し、その目標にどうアプローチするのか、大きな戦略を立てないと時間切れは迫っています。世界のトップリーグを目指すのであれば、非連続な打ち手が不可欠です。いま来ているお客さんだけを満足させればよいと考えるのであれば、改革なんて不要。市場と顧客を大きく広げる、本気の改革を期待します。Jリーグに一言A.T.カーニー株式会社 日本法人会長 パートナー梅澤高明 COMMENTS FROM ADVISERS49アジアとの連携で世界で戦えるコンテンツに サッカーの特徴である「グローバルコンテンツ」という観点から見ると、Jリーグはブレイクスルーをしてビジネス規模を大きく拡大する必要があると思います。 クラブ収支の推移を見ると過去5年間で継続的に成長しているように見えますが、これはクラブ数が増えていることも要因のひとつ。責任企業からの広告宣伝費等を通じた支援も影響しているでしょう。明確に言えることは、プレミアリーグやブンデスリーガのクラブに比べて、Jクラブの営業収益は規模がとても小さいということです。 コンテンツ産業で怖いのは負のスパイラルに入ること。サッカーで言うと、スポンサーや投資家から資金が集まらない、プレーヤーが海外に流出し、サッカーがつまらなくなり、そしてますます資金が集まらなくなる、という負の連鎖です。これを正のスパイラルに変えるブレイクスルーが必要なのです。 大事なことは、試行錯誤しながら世界のコンテンツ市場で戦える競争力をつけることです。例えば、大都市の中心にスタジアムを建設すれば客層が広がる可能性で投資家は興味を持つかもしれません。または、ファンの関心を集中させるため、クラブ数を絞った世界レベルで戦えるトップリーグを設立する手もあります。「グローバルコンテンツ」としてのJリーグの競争力世界での目標から逆算した戦略立案が鍵 世界レベルで戦う上で、国際戦略はとても重要です。今後の成長を見越し、アジア・マネーを取り込むという今のJリーグの方針は間違っていないと思います。ただし、日本的な「一歩一歩、地道に成長」というスピード感では、世界の潮流に追いつくことはできず、海外リーグとの差は開く一方です。 ビジネスの世界では、各国に1社ずつ子会社を設立して売り上げを積み上げるのではなく、グローバル企業の買収や戦略提携により一気に拡大を進めるケースが増えています。Jリーグにあてはめて考えると、例えば韓国、中国、東南アジアと恒常的に試合をするアジアリーグを設立するのも一案。Jリーグがアジアワイドで価値があるコンテンツになることが必要です。 まず国内、次に国際という順番で戦略を考えるのではなく、グローバル市場やアジア市場での戦略を立てて、それにうまくリンクするように国内の戦略を組み立てる、といった発想が重要です。本稿の章立てに表れているように、国際戦略を最後に付け足して考えているようでは世界での競争に勝つことは難しいです。 2015年に取り組んだ大会方式の変更のような試行錯誤は、常に繰り返していくことが大切です。ただし、Jリーグは世界でどんな目標を目指し、その目標にどうアプローチするのか、大きな戦略を立てないと時間切れは迫っています。世界のトップリーグを目指すのであれば、非連続な打ち手が不可欠です。いま来ているお客さんだけを満足させればよいと考えるのであれば、改革なんて不要。市場と顧客を大きく広げる、本気の改革を期待します。Jリーグに一言A.T.カーニー株式会社 日本法人会長 パートナー梅澤高明 COMMENTS FROM ADVISERS49

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