Ⅴ.参加者所感 Jリーグ欧州スタジアム視察2014報告書 (2014年2月8日(土)~16日(日)) 54 もちろんサッカー先進国のスタジアムの素晴らしさは痛感したし、学ぶべきところは数多くあった。屋根のある快適な観戦環境、地域の社交場として機能するラウンジ、365日稼働させるための多機能性、そして何よりも圧倒的に試合を観やすいスタンド。マインツのBlümlein氏が「スタジアムはエモーショナルプアーであってはならない」と言うように、「体育施設」ではなく「劇場」として機能しているスタジアムは、いるだけで時が経つのを忘れさせられた。 20年間で長足の進歩を遂げたJリーグが一層の飛躍をするためには、スタジアムの改善は避けては通れない課題であり、換言すれば、20年の積み重ねを経てそのようなフェーズに突入したのだと思う。今後、この課題への向き合い方でJリーグの中におけるクラブのポジショニングにも差が生じてくるはずであり、世界に脆弱なスタジアムを使用するビッグクラブがないように、使用するスタジアムの差が収益の差を生み、クラブ力の差へとつながることになるであろう。 直接の訪問先ではないが、チューリヒでは住民投票により新スタジアムの建設が否決された例があると聞いた。スタジアム問題でつまづき、持続的な競争力をクラブが失うことがないよう、地域に根差した小さな活動を丁寧に行うことで、スタジアム建設という大きなことに対する理解をホームタウンから得ることが、何よりも必要であると感じた。急がば回れ、「百年構想」というJリーグの原点を忘れないように今後の活動をしていきたい。 ヴィラパークには117年の歴史があるが、私たちのNACK5スタジアム大宮にも54年の立派な歴史がある。自分自身も少年時代にプレーをしたスタジアムをより発展させて、次の世代へ受け継ぐことが、自分を成長させてくれた大宮のサッカーへの恩返しになると思う。大宮公園サッカー場の時代から地域に愛されてきたスタジアムを、より良く成長させられるよう、今回の視察の経験・情報をクラブとホームタウンへしっかりと共有したい。 (大宮アルディージャ 小島 陽介) ◆ ◆ ◆ 今回の視察は、「建設までのプロセス」と「目的」、「行政との関わり・地域との関わり」などを、スタジアム建設が行われる市民レベルで見て考えてみることにした。視察のポイントは以下の通り。 1. スタジアム建設のコンセプト・目的 視察したすべてのスタジアムが(表現の仕方が違うが)、「スタジアムに訪れた人のために、スタジア ムがある地域の人のために、スタジアムがある地域のために」を目的に挙げている。 サッカー・スポーツという分野だけでなく、より多くの人が、子供からお年寄りまで、色々な人にスタジ アムに足を運んでもらいたい。そのためのスタジアムである。複合型であるとともに、試合当日は、試 合開始2時間前から試合終了後2時間まで、スタジアム内で飲食が出来るようになっているところも あった。 2. 複合型である 「商業施設(ショッピングモール)との複合が一番多く、その他には「トレーニングジム・プール」との複
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