Ⅴ.参加者所感 Jリーグ欧州スタジアム視察2014報告書 (2014年2月8日(土)~16日(日)) 53 今回スペイン、スイス、イングランド、ドイツの4カ国のスタジアムを視察し、設立されてから100年以上の歴史あるクラブから話を聞くことができた。そこで共通することは、クラブの歴史は街の歴史と一体であり、チームは街の誇りであり、スタジアムは街の中心となっている。スタジアムが新しくなったとしても、スタジアムの至る所に昔の写真、思い出等が散りばめられており、クラブの歴史がとても大切にされていた。 ヨーロッパでは、サッカークラブ自体がスタジアムを所有し、スタジアムの運営とクラブの経営が密接に関係している。国によって何を収入の柱にするかは異なっていたが、スタジアムの設備はクラブの収益に直結し、基本的にスタジアムの利用料金から年間のスタジアム経営を行う。クラブにとってスタジアムは大きな経営資産であり、街のビジネス、コミュニティの中心機能を担うことで、年間チケットホルダーやスポンサー企業を獲得しやすくなる。 試合のない日は、会議室、VIPラウンジ、レストランの利用等でスタジアムの稼働率をあげる。試合の入場料収入以外の収入源をいかに確保するか、クラブ経営の視点からスタジアム運営がされていると感じた。 日本においては、ほとんどのスタジアムは地方公共団体が所有しており、あくまでクラブは一利用者と位置づけられていることが多い。スタジアムを改修するにしても、資金は基本公費負担であり、地方公共団体が改修の決定権を持つことになる。その結果、クラブの経営や運営とは切り分けて考えられることが多いように思う。ヨーロッパとは、文化や制度など背景が異なるので一概には言うことはできないと思うが、スタジアムを単に公共スポーツ施設とするのでなく、もっとビジネスツールとして活用することが大切ではないかと感じた。 そして、税金を入れずともスタジアムの維持管理にかかる費用を捻出するとともに、いかにクラブ経営をサポートしていけるかが重要だと思った。 現在のスポーツ振興くじ助成金の制度において、Jリーグホームスタジアムの改修事業は募集することができていないが、募集に際して、具体的な設備を付与することを交付の条件にするなど、スタジアムを整備した後にいかに運営していけるかを視点にして、効果的な助成制度を考えていく必要があると感じた。 (独立行政法人日本スポーツ振興センター 鈴木 友喜) ◆ ◆ ◆ 今回の視察を通して私が最も感じたことは、クラブと街が一体となって取り組んだ努力と情熱の結果がスタジアムという成果に表れているということである。10のスタジアムを訪問したが、どのスタジアムにも積み重ねてきた努力・情熱と、100年前後の時間の積み重ねがある。つまり、取り組みの「クオリティ×時間=スタジアムというひとつの成果」であると思う。時間が育てるものも多々あると思うが、私たちが100年の歴史を持つ欧州と同じ成果をより早く手に入れたいならば、質を上げること、工夫することが大切ではないだろうか。欧州と同じことをしていたら、同じように100年かかってしまう。 Ⅴ. 参加者所感
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