Ⅲ‐1.ダービー・カウンティF C_ Jリーグ欧州スタジアム視察2014報告書 (2014年2月8日(土)~16日(日)) 28 (2)ピッチ、その他 ピッチ管理者は2人。芝刈りでも車両は使わず、手押しタイプの芝刈り機を使い、2時間半かけて1面をメンテナンスしている。ピッチは、イングランド特有の勾配が20cm程度あり、水はけに対応する。 今年になり、ダービーをはじめとする各クラブから、立見席の復活を求める声が強く出て、検討されている。近い将来、2部で「安全を保障した立見席」が収容人数の10%、ダービーに例えれば3,000席程度の立見席ができる可能性があるという。 5.集客の秘訣 (1)ファンとの対話の会もスタジアムで 「クラブの最大のセールスポイントは、130年分の歴史の重さ。その魅力をアピールし、コミュニティに働きかけることを念頭に置いている」とヴィカーズ氏は強調した。 ウェブサイトやソーシャルメディアだけに頼らず、イベントにトップチーム選手を積極的に派遣している。また、クラブ役員やトップチーム選手とファン代表との対話の会「Your 90 minutes」を毎月開催。 会場はスタジアムにある役員室。互いの声に耳を 傾け、要望や提案を協議するミーティングを毎月1回、設けている。 この「Your 90 minutes」に至る1年半ほど前から、クラブ役員や主要スタッフは、3~4名のチームになって街中のパブに出向き、ファンとフランクに意見交換する活動を行ってきた。身近なクラブである姿勢を見せたこの活動はとても好評で、1年半で約30ヶ所まわったという。 (2)若年層ファンの開拓 12歳以下のRumsメンバーシップは、年間£30(5,040円)でホーム全試合を観戦でき、誕生日やクリスマスには選手のサイン入りカードが届く。 試合前には、スタジアムの一部を開放して親子でマスコットと楽しめる場を提供。練習見学の機会もある。少し価格は上がるが、13~14歳、15~16歳のメンバーシップもある。 試合ごとに販売されるファミリーエリア(コーナーに設置)のチケットにも、工夫を凝らしている。試合前やハーフタイムにピッチでPK戦に参加でき、エスコートキッズ、フェイスペイントや記念撮影など盛りだくさん。そこへマスコットが現れて子供たちを驚かす。年間だと大人ひとり£285(47,880円)で12歳以下の子供は無料。試合単位でも買える。ダービー・カウンティ コミュニティトラストと提携した施策は、子供ファンに素晴らしい体験を提供。クラブは、2013 年の「Football League Family Excellence Award」を受賞した。 ダービーは、ダイナミック・チケッティング・システムと称し、チケットの早割(家族揃って観戦できる廉価設定)や、12人以上のグループ割引も、他に先駆けて導入したクラブ。 グループチケットには、選手との記念撮影や、guard of honour(選手入場の際に整列して拍手で迎える)の特典もつけている。クラブは地元にある小学校から大学まで、330校にもグループチケットを斡旋しており、学校単位での来場もある。 ただし、全体の70%を占めているシーズンチケットホルダーには、こうした施策割引について、シーズンチケットを越える割引は行わないと事前に確約している。 ちなみに今年のシーズンチケット価格は、£230~630(38,640~105,840円)に設定されている。
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