スタジアムプロジェクト欧州視察2010報告書
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Ⅶ.参加者所感 Jリーグ スタジアムプロジェクト 欧州視察報告(2010年10月) 85 べる施設に適時発展させられるよう、可能性を残した建設を行えればと思う。 本来、スタジアムはそれがある地域の今または将来像に合ったスタイルであるのが好ましいとも思える。いろいろな素材をまな板に載せ、その街の味付けで調理したほうが、やはりその街の人の口に合うはず。そういう意味では、今回の視察で得たいろいろな事例はまさに大事な素材であり、スタジアム造りのため、大きく前に進めた気がする。 ◆ 全体を通して感じたことは、社会における、人々の生活における、サッカーの占める割合が日本に比べて高いということ。そのため、スタジアムに期待するレベルも日本に比べて高いと感じた。スタジアムの運営者は観客の高い期待に応えるため、施設を充実させる必要があり、施設を充実させるために、工夫をし、様々な方法でコストを捻出してきた、ということなのだと思う。「施設を充実させる」内容については、お金をかけて投資して、高いサービスを提供している部分もあるが、工夫によって施設の価値を高めている部分も多かったと思う。 ラウンジ周りの設備、サービスが、日本の状況と比べてかなり良かったが、「パーティ」や「家族の時間」を大事にするヨーロッパの文化が日本にそのまま合致して受け入れられるかについては、よく検討する必要があると思う。ヨーロッパの模倣に偏らないよう、日本独自の考え方は必要だと思う。 (週末の一日(あるいは半日)を家族と過ごす、家族で楽しめる場所へ行く、その選択肢としてスタジアムがその役割を担う、という構図になるのかどうか。) 視察地ではスタジアムが地域の生活に密着しており、貧しい地域の希望となっていたり、雇用の受け皿となっていたり、複合型施設によっていつも人が集まる場所になっていたりと、スタジアムは単なる「競技施設」ではないことが強く感じられた。 このような場所を作ろうとする意志に基づいてスタジアムから作り上げていかなければ、単にイベント等でファンを呼ぼうとしても限界はあると感じた(単に入場者数だけの問題ではなく、質の違い。)。例えば「よりよい地域社会を実現するための取り組み」として、本体の建設ということだけに捉われずに、行政が積極的に関わる(バックアップする)必要がある。 また、陸上競技場との併用はやはり観客にとっても、選手にとってもメリットはない様子。陸上競技場に大型の観客席(スタンド)が必要なのか、と考えさせられる。用地の確保が難しいのかもしれないが、できれば専用の施設を別々に設けることが、求められていると思う。 サッカー文化の根付いた地域とはいえ、今回見てきた施設でも、国際大会の開催やライセンス規程に合うスタジアムにする必要に迫られたことが、改修のきっかけとなっているケースは多かった。日本でもそのような機会は逃してはならないと強く感じた。 ◆ 参加したメンバー間でのコミュニケーションが非常にスムーズだった。朝食をはじめ、時間を見つけては各自が積極的にコミュニケーションを取ろうという姿勢があった。

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