Ⅶ.参加者所感 Jリーグ スタジアムプロジェクト 欧州視察報告(2010年10月) 83 また、どのスタジアムもピッチとの距離が近く、見やすく、迫力が伝わってくる。スタンド前部とピッチに段差はなく、一番前の席はピッチの高さで観戦することとなる。一部のスタジアムでは、最前列が掘り込まれており、いわゆる砂かぶりで一つの観戦スタイルを提供していた。 駐車場はやはり必要。ほとんどのスタジアムが公共交通機関でアクセスできる便利な場所にあったが、それでも車での来場者のための駐車場が確保されていた。関係者用はもちろんのこと、特にVIPへの配慮(大切な収入源)として必須。 複合化によって、スタジアム下や隣接部の有効活用を図って、試合のない日でも人が集う場所になっており、またサッカー収益のリスクを補っていた。サッカーだけでは経営が成り立たない、サッカーはリスクが高いと言っており、これでは複合施設がだめになった場合、スタジアム運営もだめになるとかはありえないか。複合する施設もサッカーと関連するもの(ファンショップ、クラブハウス等)か、もしくはシナジー効果が得られる施設(レストラン等)が望ましいと思った。やはり、基本はサッカーであり、サッカー経営がしっかりしてないといけない。 ドレスデン(クラブは3部)はスタジアム整備にあたってPPP(官民連携)を活用しており、大変興味を引いた。これは、市が考案したとのことで、手法としてはスタジアム整備費用€4,500万(54億円)のうち、市の補助は€500万(6億円)のみで、残りはスタジアム運営会社が借金で調達し(市が保証人)、返済していくとのこと。ただし、その後30年間、クラブの所属リーグによって運営補助金/1部:なし、2部:€52.7万(6,324万円)、3部リーグ:€212.7万(2億5,524万円)、それ以下:€276.7万(3億3,204万円)いずれも年額/ を市が援助することとしている。 試算すると、30年間ずっと1部に在籍できれば、市はわずか6億円でスタジアムを手に入れられることになるが、3部のままだと、補助金は€6,381万(76億5,720万円)となり、当初の€500万を合わせると、€6,881万(82億5,720万円)となり、軽く建設費用を上回る。 これをどう捉えるかは難しいが、初期投資を抑えたい、またクラブの活躍を祈りそれにより運営費を抑えられないかという、(市にとって)一石二鳥の見事なスキームであり、簡単に言うと、クラブ活躍特典付き長期ローンというところか。 ただし、補助金を左右する所属リーグリスクについて市民・議会の理解が得られるのは、ドレスデンにおけるクラブの「位置付け」か。市の担当者は、「市の看板」「まちの顔」という言葉を使っていた。貢献度・アイデンティティか、認知度か、誇りか、(入場者数は3部では1番の)歴史か。 これからスタジアム整備を検討する上で、PFIをはじめ色んな形のPPPの手法が日本で取り入れられることとなると思われる。財政状況が厳しい中、民間資金・ノウハウの活用については大きなテーマとなる中で、このドレスデンの例は大変参考になった。 ◆ スタジアムの内外を見て回る際には、欧州的な造りの利点に、日本的なニーズがどう組み入れられるかがポイントだった。 欧州では、試合に火照る観客をダイレクトにさばく。ちゃんと“入れて出す”ことを念頭に置き、動線は単純明快に動線としての機能が追求されている。よって、叩き台としてちょうどいいものがいくつもあった。欧州の上に、入場
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