Ⅶ.参加者所感 Jリーグ スタジアムプロジェクト 欧州視察報告(2010年10月) 82 スタジアムを管理(運営)していく上で必要なことは、チームを愛する心、観客(ファン)をいたわる気遣い、グラウンド(施設)を大切に思う気持ち。今回の視察で一番心に響いたフレーズである。 ひと言一言は、至極当たり前のことであるが、その当たり前のことを、程度の差はあるにせよ今回視察した各スタジアムが具体的に実行していること目のあたりにし、少なからず衝撃を受けた。 日本では、過去にプレーした選手や監督の写真やグッズをスタジアムの随所に展示し、クラブの誇りとしているか。選手とともに家族をレセプションに招待し、家族の目前で選手を称えたりしているか。 日本では、観客が雨に濡れないようにスタンドに屋根をかけているか。早く来た観客が気持よく飲食できるスペースが確保されているか。パトロンが満足できるようなサービスを提供しているか。 日本では、試合中削ってしまった芝生を元に戻す選手がいるか。グラウンドキーパーや用具係に敬意を払っている選手や関係者がどれだけいるか。 今の日本にとって、欧州以上のスタジアムを建設することは、技術的に何の問題もなくクリアするであろう。しかし、スタジアムに対する「根底にある気持ち」をクリアしない限り、真に快適なスタジアムを造ることはできない。スタジアムを管理している地方公共団体。リーグを運営しているクラブ関係者。フィールドでのパフォーマンスの向上を目指すチーム関係者。それぞれが同じ目標を共有し、一歩ずつ当たり前のことを具体的に実行していくことが重要であると、思いしらされた。 ◆ 横並びで没個性のクラブ・スタジアムなど何処にもなかった。 バイエルンのような健全経営で豊かなクラブもあったが、経営面の問題を抱えていたり、経営形態の工夫をしているクラブ、増改築や試合だけではなくイベントなどの多彩な目的利用を目指すスタジアム、地域の社交場として確立しているクラブ、伝統と革新を併せ持つクラブなど、それぞれが独自の存在意識とマネージメント哲学を持ち経営努力を図っていた。 『 夢のあるところに人は集まる!』 この視察で得たものを自チームの具体案として落とし込み、観客の五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)にさらに訴えたい。Jリーグの各チームと共に手を取り合い、リーグの繁栄と活性化に繋げて行けるように有効活用したい。 反面、Jチームは全ての面で20年、いや50年程遅れている現状があることも痛感した。今の我々に出来ることは小さい部分からコツコツと積み上げて行くことだけかもしれない。遥か遠い道のりであっても、日本サッカーの磐石の基盤と豊かな文化を創り上げるには、それは避けて通れないものであることも事実である。 ◆ スタンドの勾配は重要な要素である。今回視察したスタジアムは、急なところで35度程度であった。急勾配は臨場感を高める一つの要素であり、安全性と背中合わせであるが、スタジアムづくりの際には拘りたいところである。 Ⅶ. 参加者所感
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