スタジアムプロジェクト欧州視察2010報告書
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Ⅵ‐1.バイエルン・ミュンヘン Jリーグ スタジアムプロジェクト 欧州視察報告(2010年10月) 80 ター・ユナイテッド所属)が挙げられる。彼は15歳の時カナダで発見され、3年間アカデミーの寮で生活した。2001年にトップに昇格するとブンデスリーガ、UEFAチャンピオンズリーグで優勝した。この1年後、マンチェスター・ユナイテッドに€2,500万(30億円)で売却した。好例ではあるが、これは我々の哲学ではない。選手を売却して利益を得るのではなく、クラブに貢献してもらうことが狙いである。 ◆プレス部門 メディア対応や出版物発行を行う。試合ごとにマッチデープログラムを制作(1シーズン18回)しており30万部発行、会員には家に送付している。 (3)質疑応答 全体について、質疑応答を行った。 Q:アカデミーにかかる予算は? A:年間€300万(3.6億円)ほどかかっている。寮生自身の費用負担はなく、全額クラブが負担している。ハーグリーブスは8年分の予算を稼いだと言える。 Q:チケット販売においてインターネット販売が占める割合は? A:現状80%がインターネット販売となっており、目覚ましい伸びを見せている。購入はチケットセンターかインターネットかの2択しかない。ドイツ国内だけで1,000万人が我々のチケットを購入しているが、バイエルン州近郊から来る人は半数の500万人に過ぎず、遠方から来る人も多いためインターネットの割合が高いと言える。 アリアンツ・アレナの収容人数69,000名のうち、35,000席をシーズンシートとして販売している。売ろうと思えばもっと売れるが、毎回色々なファンに来場してもらうためこの数字に押さえている。これはファングッズの売上にも影響する。シーズンシートの人はグッズを1度買えば終わりだが、そうでないファンは毎回購入してくれる。 Q:練習場を市民に開放している? A:ファンはいつでも歓迎している。夏休みには1日5,000人が来場することもある。通常は300~400人程度。入場料は取らず、写真撮影もOK。運が良ければ選手のサインがもらえることもある。ピッチの開放は特に行っていない。 4. 所感 スタジアムもクラブハウスも最新鋭の素晴らしい施設であり、FCBの王者の貫録のようなものを見せつけられた。 アリアンツ・アレナはサッカースタジアムにも関わらず、ノン・マッチデーの利用者が大変多く、我々の視察時も他のスタジアム・ツアーのグループを見かけた。ラウンジもうまく運用しており、2クラブのホームスタジアムであることも苦にせず効率よく対応しているように感じた。細部まで行き届いたブランディングや各ファシリティの配置、動線など、良く考えられ設計されており、規模はかなり大きいものの、理想とすべきスタジアムである。 ゼーベナー・シュトラーセは、本当に居心地の良いリビングのような場所で、選手にとって素晴らしい環境だった。ここで練習できるのであれば、とFCBを選ぶ選手もいることだろう。FCBのアイデンティティ、王者としての誇りを施設からもスタッフからも強く感じた。 我々にとっては未来の理想のスタジアムならびにクラブハウスであったが、それが現実に存在している。FCBという優良クラブだからこそ実現できるのかもしれないが、そこから哲学やエッセンスを少しずつでも取り入れていくことが理想に近づく手だてだと思う。

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