Ⅴ-1.レンジャーズ Jリーグ スタジアムプロジェクト 欧州視察報告(2010年10月) 52 (4)ユニフォーム レンジャーズのユニフォームの背中についている背番号の中には、ひとつひとつリーグ優勝トロフィーのシルエットがプリントされている。前年のタイトルホルダーだけに許された証が心憎い。 胸のエンブレムの上には、5つの星。リーグ優勝10回につき、ひとつの星が付けられる。 4. 所感 アイブロックス・スタジアムには、ふたつのポイントがあった。 ひとつは、ホームクラブの歴史、伝統のすべてが詰まってこそ、「ホームスタジアム」と言えること。レンジャーズは、装飾、展示の品ひとつひとつに「価値」を見いだし、それを大事にスタジアムに残すことを「誇り」としていた。それぞれの展示品は、クラブや選手だけでなく、ファン・サポーターから寄贈されたものもある。中にはスタジアム周辺から発掘された「遺跡」のような品まで飾ってあった。「みんなで一緒に積み重ねてきた文化」は、我々に「スタジアムの芸術」として目に映った。 もうひとつは、その価値を「ファン開拓、ビジネス」に活用していたこと。スタジアム・ツアーでは、参加者を監督室の椅子に導いて黒電話を取らせ、チーム更衣室を出る際に選手と同様に女王陛下の写真の下の板を叩かせる「体験型手法」で、「憧れ」を引き出していた。 帰り際、ガイドのアンディ氏は、我々に向けて、「良い雰囲気、サッカーがしたくなるようなスタジアムをつくることが大事」と言葉を添えてくれた。そこにクラブの伝統が刻まれ、伝説が受け継がれていく。 このスタジアムが「Temple of Dreams 夢の神殿」といわれる所以はここにある。
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