Ⅳ‐1.ウエスト・ブロムウィッチ・アルビオン Jリーグ スタジアムプロジェクト 欧州視察報告(2010年10月) 46 が何かに使えるような施設を建てたいという意識があるため。 そのために、使っていない建物があるスタジアム周辺の土地は早めに購入し、将来的にクラブが手を入れられるようにしている。 (2)地域貢献のための施設建設 スタジアムのすぐ近くにスポーツホールという体育館があるが、クラブがお金を出して施設を造り、地元の人たちに利用してもらっており、地元に貢献していくという活動を行っている。 6. これからのスタジアム建設について (1)スタジアム建設・改修のポイント ①地域貢献を念頭に置くこと 改修に限らず、クラブとして、念頭に置いておくべきことは、特にこのサンドウェル地域では、「裕福ではなく、貧しいエリア」のため、地元に対し、「クラブは常に希望を与えて、地域を引っ張っていく存在でなければいけない」とのこと。 ②徹底的な採算性・ビジネスモデルの検証 クラブはスタジアムを運営する立場にあるので、改修なり増築がビジネスモデルとして本当に採算の合うものになるかという観点を徹底的に調べ、着手するかどうか、着手するならどれくらいの規模になるのかという話し合いを重ねることが重要。 ③現実的なタイムスケジュールの策定 工事の期間が3~4ヵ月でできるという予定でも、実際には半月くらい長いというケースは良くあるとのことで注意が必要である。 ④関係者への十分な事前説明 スタジアムを管理するクラブだけではなく、選手、グラウンドキーパー、サポーター等に、改修や建て増しをした際、どのような影響があるかを事前にきちんと説明し、外部の方々にインプットすることも大切。 ⑤地元企業(パートナー)との協働 将来的に、新スタジアムを建てようという時には、クラブだけではなく、地元の企業をパートナーとして呼び込み、スタジアムに隣接する形でオフィスがあるというような、雇用面も訴求する必要がある。そうすればクラブとして、費用を企業等と折半することもできるというアイディアも浮かぶ。 (2)複合型スタジアムについての見解 ①他国との「スタジアム」の考え方の違い ドイツやスイスのように地元のハブのような形でスタジアムやクラブが存在するのが理想的。 しかし、イングランドは古くから歴史があり、「スタジアムは当然サッカーをする施設、クラブは複合施設を運営する機関ではなく、フットボールクラブとしてサッカーチームを運営する存在」となっているところが多い。 ②他国との「クラブ運営」の違い ドイツではサポーターがクラブを所有しているというスキームが一般的。イングランドは、クラブの株主なり、裕福な個人一人がクラブを所有しているという経緯がある。 したがって、ドイツ、スイスと同じスタンスで運営することはなかなか難しい。その代わり、イングランドのクラブはフットボールクラブ、サッカーをするためのスタジアムを運営するということにかけては経験もあるため、この方向で良いと思っている。 偉大なストライカーであった、 Jeff Astle 選手を称えた 「The Jeff Astle memorial Gate」
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