スタジアムプロジェクト欧州視察2010報告書
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Ⅲ‐3.ザンクトガレン Jリーグ スタジアムプロジェクト 欧州視察報告(2010年10月) 38 る。 日本の状況からみると、施設一体化によるコストアップが土地・施設の効率利用価値を上回るかもしれない。そうした場合には一体化ではなく隣接地利用の複合化にしてコストを軽減して、かつ平日のゲーム外イベントの拡大により商業施設との集客相乗効果を増大化すべきであろう。 ③スタジアム運営会社がクラブ運営費を負担する経営システムについて 大型複合施設の運営管理委託という条件とネーミングライツAFGおよびその関連会社との10年契約に基づく経営システムの構築は大変興味深いものである。クラブ経営で巨大企業の支えのない地域市民クラブの経営手法の一つであるが施設の経営成功が前提で受けいれられる条件でもあり、投資前から行政中心に住民の十分な賛同を得る必要がある。 ④AFGアレナの新スタジアム効果について 旧スタジアム(11,000人収容)で平均9,000人の観客だったが、新スタジアムは20,300人収容で降格したが1.55倍の14,000人で5,000人の観客増。これは完全に新スタジアム効果と考えられる(ベルンやバーゼルも3~4割増)。 北九州にあてはめて考えると、新スタジアム完成までに約5年と予定されており、またJ1昇格のため安定的経営条件として12,000人を想定しているので逆算して現スタジアムで平均7,000人を超える集客が必要であり、ファンクラブやイベントの充実、魅力あるシーズンパスづくりなど直接的集客施策だけでなくホームタウン活動や地域貢献活動の充実も含め、現スタジアムでの集客努力の必要性を痛感している。 ⑤AFGアレナのスタジアム規模について AFGアレナは2年間で6回の満席を経験しているが、平均は14,000人の観客数であり、7割の入場率は観客には快適に近い状況であり、現在では20,000人収容が適当と思われる。 そこで北九州をみるとJ2レベルでは1試合平均12,000人集客目標であるため、18,000人規模でよいが、J1昇格を想定した場合では1試合平均20,000人集客が必要であり、ホームタウン規模を考慮しても25,000人規模のスタジアムが適正と思う。 ⑥スタジアム経営の方向性について 今回の視察で良いスタジアムの条件は次の2点だと考えるようになった。 (1)「観るひと」が自分の求める満足度を達成する環境が備わっていること (2)スタジアムで観戦する人に見易く、雰囲気が伝わるような態勢(マスコミ環境)がきちんと整備されていること 以上の2点が成立してこそ永く健全なスタジアム経営につなげられる。そのためには日本では①平日でも多くの人が短時間に近寄りやすいアクセス環境、②満足度に応じた席やホスピタリティ(施設やサービス内容)の提供、③適正コストによるスタジアム建設と周辺地域を含んだ建設費の調達による財務の健全化、④マスコミが良質な情報提供ができる環境づくり、⑤地域住民がスタジアムで楽しもうとする気持ちの醸成などが必要だと今回の視察を通して強く感じている。

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