Ⅳ‐3.ブラックプール Jリーグ ホームタウン・イレブンミリオン 欧州研修報告(2009年1月) 45 不動産会社の元々の目的は、グラウンドや建物などの資産を別会社が所有する形をとり、クラブが経営危機などで破産した際にも、資産を失わないようにすることだった。 イングランドでは、元々自前のグラウンドなどがあるクラブは経営危機に備えて不動産会社を持っているパターンはあり、自前のグランドがないクラブも何かしらの方法で経営危機に備えているという。 6. まとめ チャンピオンシップ(2部)リーグに所属するBlackpool F.C.は、地元観光と上手く付き合いながら、その観光客までもスタジアムに誘致しようとしているところが印象的であった。加えて、アジア系住民へのアプローチなど、柔軟に地域へ向けての施策を行っているところも注目すべきところであった。近年のスタジアムへの集客においては上手くいっており、スタジアムを拡張することで、さらにチケット収入を上げてクラブの収益を安定させようとしている。プレミアリーグのクラブをはじめとするイギリスのクラブでは、テレビ放映権の割合がクラブ収益において大きな割合を占めているが、Blackpool F.C.においては、他の事業でも収益を上げ、クラブの安定経営に勤めていた。 チケット戦略においては、目新しい取り組みは見られなかったものの、地域を重視したチケット戦略ではJクラブと同じような取り組みを行っていることもわかった。フットボール文化が浸透しているイギリスにおいては、チケット戦略であまり多くの取り組みを行っているわけではない。この点に関しては、Jクラブもホームタウンで行っているチケット戦略に自信を持って取り組んで行くべきである。 Blackpool F.C.への訪問で、Jクラブスタッフが驚いたところは、サポーターズ・アソシエーションとの関係であろう。Jクラブにおいて、サポーター団体との関係は非常に気を使うところであり、重要な部分である。Blackpool F.C.においては、アソシエーションに加盟することが、唯一クラブに対しての発言権を与えられた団体であり、その他の団体については、一切発言を聞き入れないというスタンスがクラブに徹底されているということであった。このスタンスにおいて、サポーターとクラブが協力している点において、興味深い関係があり、Jクラブにおいても参考となる点であった。 もう一つ、Jクラブスタッフを驚かせたことは、不動産ビジネスを昔から行っているところである。フットボールの歴史が長いことから、グラウンドという土地を所有していたり、物件を所有していたりと、そういったビジネスが成り立っているということである。ここからの収益もクラブの経営に反映されている。集客という点では直接関係はないが、Jクラブとは違った収益構造を知ることは、重要なことであった。 Blackpool F.C.においても、他のクラブと同じく歴史を非常に重要視しており、それを地域と共に共有している点では、Jクラブの参考になる点が多い。ファンやサポーターにクラブの歴史をしっかり伝えることで、地域のシンボルとなり、それが誇りとなることを肌で感じることができた。Jクラブにおいても、しっかりとここまでの歴史を伝え、地域と共にクラブ作りを行っていかなければいけない。誇りを持ったファンやサポーターは必ず、クラブを支えてくれる存在になるに違いない。 最後に、今回の訪問を快く受け入れていただいたBlackpool F.C.のスタッフ皆様に対し、御礼申し上げたい。
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