ホームタウン・イレブンミリオン欧州研修2009報告書
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Ⅱ‐4.ビジャレアル Jリーグ ホームタウン・イレブンミリオン 欧州研修報告(2009年1月) 15 (2)トレーニング施設の整備とその考え方 本トレーニング施設は現会長が就任した際、大掛かりな改修を行った。その資金は会長、クラブ両者の出資によって着手された。一番の目的は将来に繋がる選手育成を強化するためであった。現在、クラブハウスに併設された寮に90名程度の子どもたちが生活しており、午前中は提携する公立学校での授業、午後はサッカーのトレーニングというサイクルとなっている。ビジャレアルではこれまで多くの選手を輩出しており、現在、1部、2部、2部Bを合わせると約40名のユース出身選手がプレーしている。育成に関してはサッカーだけでなく学力や人間性にも配慮したシステムが整備されている。部屋には机、ベッド、棚、ロッカーしかない、シンプルなつくりとなっており、サッカーに集中できる環境が整っている。さらに、勉強の成績が思わしくない子どもには学校の先生を招いての課外授業を実施しており、そのための学習ルームも備わっている。 <寮の部屋の様子> このような育成システムで育てられた選手はトップチームに昇格したとしても期限付き移籍で放出されるケースがほとんどだという。その後、ビジャレアルに戻り、活躍する選手もいるが、完全移籍する選手も多くいる。そういった選手の移籍金もクラブにとっては重要な収入源として計画されている。収入の割合からすると約9%(2008-09シーズン)が選手の移籍に伴う収入である。 (3)その他の活動 このトレーニング施設ではトップ選手のトレーニングと選手育成のほかにも役割を持っている。そのひとつが小学校の授業への開放である。ここでは授業の一環としてサッカーのリーグを開催している。現在150のチームが登録し、午前中の利用はこの事業が中心となっている。クラブは場所を提供するだけでなく、コーチによる指導や、トレーニングウェアのプレゼントも行っており、将来のファンづくりの場としても活用している。 子どもたちのほかにもクラブに登録すれば空いている時間帯に無料で施設を借りることができ、サッカーだけでなく、そこでできる様々なスポーツを利用者は楽しむことができる。現在は約7,000人が会員登録しており、夜間は企業などが借りるケースが多い。 このような地域住民に対するサービスを充実させられる背景にはバレンシア州やカステジョン県、ビジャレアル村などの行政の絶大なる支援がある。これら行政からの助成金をつかって様々な事業を展開している。 また、フンダシオン(財団)を設立してスポンサー等から寄付を募り、クラブの行っている公益的な活動の資金としている。この資金からは子どもたちの指導を行うコーチの給料や寮に暮らす子どもたちの食事代もまかなっている。 そもそもこのフンダシオンはスポンサーからの要望にこたえる形で設立された。スペインではこのようなフンダシオンに寄付を行うと税制上の優遇が受けられるため、このような経緯があったそうだ。 3.スタジアム見学 (1)スタジアム概要 ビジャレアルのホームスタジアムである「エル・マドリガル」は1923年にクラブの創設とともに造られたスタジアムである。立地としては住宅街の中にあり、試合時は徒歩圏の来場者が大半である。所有

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