欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査2008報告書
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ムおよび付設のスポーツ施設を運営する。ヒポ・グループ・アレナは実質、市が建設、所有し、かつ運営するスタジアムである。 スタジアムは2007年9月の竣工からほどなく2008年3月にはUEFAに貸し出される。すべてはユーロ2008が終わってからのことになる。 施設の貸出は有料とする予定。たとえば照明灯を使う場合いくらといった料金体系で運用することになるだろう。スポーツパークも、使用料を課しながら運用していく。 「それでもスタジアム運営は、州や市の補助金を想定した計画となるだろう」とFritz氏は言う。 「たとえば学校は、赤字経営でもなくならない。スタジアム運営でも、本当に困ったときには補助金が出てくるだろう。 世界中のどこでもスポーツ施設運営はたいてい赤字でしょう。たとえばベルティンス・アレナ(ドイツ、ゲルゼンキルヘン)は黒字経営との評判だが、どこかから見えにくい形で補助金が入っているのだと思う。 クラブが支払う利用料は、管理会社を通じて、施設所有者である市の右ポケットに入る。補助金は市の左ポケットから出て、管理会社やクラブに交付される。そんな理解でいいのでしょう」 施設運営についてはおそらく専門外のFritz氏の説明で、いささか理解しづらい部分もあるが、特徴的な考え方として紹介した。3図 2:スタジアム前景 CASE 6; HYPO GROUP ARENA, (Klagenfurt, Austria), ver.5 p.4 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved 3 右ポケット(収入)と左ポケット(支出)の差こそが、施設管理上の関心事であるべきだろう 5 スポーツは、個人のものでない オーストリアでは、スポーツ施設をつくる際、民間の誰かが投資して、その他を公共の補助金で補うといったやり方はとらない。すべて公共事業として行う。 「スポーツは、州、市の文化で、個人のものであってはならない。従ってスポーツを行う施設を、民間が所有することもありえない。スポーツが施設は皆が使え、皆がアクセスできるためにも、公的存在であるべき」という。 「スポーツパークをつくるのも、収益のためでなく、スポーツと若者に貢献するため。たとえばオーストリアには名スキーヤーを輩出した有名な公立スキー学校があり、今も中学、高校年代のエリート選手を育成している。このように、スポーツによって若者に夢を与える、という発想にたっている」 図 3:スタジアムに併設されるスポーツパーク 6 SKオーストリア・ケルンテン ヒポ・グループ・アレナをホームとするSKオーストリア・ケルンテンは、SVパッシングから2007年6月、オーストリア・ブンデスリーガのライセンスを譲り受けて設立された、サッカークラブ。 クラブとスタジアムを管理するスポーツパーク社は、互いに独立した法人。クラブは試合日に使用料を支払って、スタジアムを借りる立場にとどまる。 他方、施設所有者である市は、ネーミングライツ権をクラブに譲渡した。クラブはヒポ・グループと10年契約を締結し、収

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