反映される。 残りの3施設では、クラブは一テナントに徹している。リコー・アリーナは、公民折半出資で管理会社を設立した。はじめはクラブが出資していたが、いまは地元の基金が買い取っている。アムステルダム・アレナは、施設建設のための特別目的会社の傘下に、公民共同の組織を設置して管理にあたっている。ヒポ・グループ・アレナは、市の100%子会社が、管理事業者となっている。 いずれの事例においても、スタジアム建設者、所有者、管理者、主たる使用者の関係は、複雑に入り組んでいる。それは、借入金返済、減価償却、固定資産税、および大規模修繕用の積立といった、施設所有に関わる固定的な費用を、最大限縮減するための複雑さと思われる。これらの構造を明らかにするためには、背景にある各国の税制および法人制度を十分に理解する必要があり、今回調査で十分対応できたとは言い難い。 しかしながら各事例のケース・スタディに、できる限りの読み解きと詳細なデータを掲載しているので、ぜひご覧いただきたい。 図 5:MSVアレナ 8 多機能化と柔軟性 6つの施設の管理運営事業に共通しているのは、多機能化、多角化である。 アムステルダム・アレナは、自らをサッカースタジアムでなく、多機能巨大アリーナ(Multi-function Mega Arena)と位置づけている。公共100%で管理するヒポ・グループ・アレナでも、同じキーワード、多機能性(multi-function)が使われていた。年間20~30程度の試合数しかないサッカースタジアムでは、施設の収益性を高めるために、サッカー以外の機能を充実させる必要があるのだろう。 リコー・アリーナは管理事業で最も重要な要素を、柔軟性(flexibility)と表現していた。すなわち施設の様々なスペースを、用途に応じて、できるだけ多様かつスピーディに使い分けることを、重視している。彼らがお手本にしていたのは、アメリカのプロサッカーMLS(Major League Soccer)のトヨタ・アリーナで、ピッチを使ってコンサートを開催した翌日でも、プロサッカーの試合を開催できるほどの柔軟性があるという。 9 収益事業の多角化 欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査Ver. 9 p. 7 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved 9.1 充実したホスピタリティ・スペースを、試合日以外にも活用する 欧州のサッカースタジアムに共通しているのは、プロサッカー試合でVIP客を迎える設備の充実ぶりである。スタンドの2階または3階のほぼ全フロアにわたって広大なバンケット・スペースを展開し、試合日にはあたかも、ホテルの大宴会場におけるパーティのような、活気に満ちた雰囲気になる。また10~15人向けの個室を、年
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