欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査2008報告書
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CASE 4; RICOH Arena, (Coventry, England), ver.5 p.17 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved AWM ・ ガス工場跡地の取得 ・ 同地での3,400以上のフルタイムまたはパートタイムの新規雇用 ・ 300の雇用が守られる ・ 市に20の新ビジネスが生まれる ・ 民間セクターによる、ガス工場跡地に対する、130百万ポンドの投資 ・ 公共セクターによる、ガス工場跡地に対する、108百万ポンドの投資 ・ 32ha5に及ぶ工場汚染地域の再生 ERDF ・ 3haの放置された土地の開発 ・ 17,463㎡の建物の提供 ・ 2007年末までに23.7百万ポンドの新規売上 ・ 460の新規雇用 ・ のべ75万人以上の訪問客 ・ 2つの公共交通機関を創設 ・ 開発地域の住民が1日あたり88人、公共交通機関を利用 ・ 2つのバス発着場 ・ 線路をくぐって駅に到る通路 テスコ ・ 20,560㎡の小売りスペースを開発 ・ 英国最大規模のテスコ店舗を開店 ・ Successful letting of other units 市はこれらの効果を実現するためにも、コベントリー・シティFCにプレミアシップに復帰して欲しいと願っている。復帰すればクラブとともにリコー・アリーナも、世界的に露出するようになるからだ。 前記した成果は公式書類に記されたものだが、書類に残されていないやりとりもあった。たとえば運営会社のACL社が必要とした民間借入の件ではまず市がつなぎ融資し、ACL社は2006年6月にヨークシャー銀行からの借入金を原資に、返済した。 また補助金を拠出したAWNとERDFが、全体の土地35haのうちそれぞれが関与した32haと3haから、それぞれに成果を求めている点も指摘しておきたい。 5 1ha=10,000㎡=100m×100m [リコー・アリーナの運営] リコー・アリーナを運営するのは、ACL社だ。ACL社の50%をヒッグスチャリティが、所有している。残り50%は市が、100%所有するNCホールディング公社を通じて、所有している。ホールディング公社の100%子会社であるNC再開発公社が、リコー・アリーナの建設主になった。ACL社は開発公社からリコー・アリーナを賃借している。 リコー・アリーナの運営を、建設や所有から切り離したことは、すなわち民間セクターから公共セクターを分離したことを意味する。両セクターの取引は、商業ベースで行われる。この構造により、民間セクターの援助において違法状態が生じにくくなる。 この構造は税負担を軽減する。またEUや州の援助を営業マターでなく、公共セクター(すなわちコベントリー市)に集中させる効果がある。そして民間の関係者は営業事案に集中する。 [開発費用とその調達] ガス工場跡地の開発は、主に3者によって担われた。 ・ テスコによるショッピングセンターの開発。(用地全体の土壌修復とインフラ整備を含む) ・ 市によるリコー・アリーナの建設 ・ 民間会社による投資 それぞれの開発は、互いに連関しながら進んでいった。用地を正式に取得したのは市で、2003年のことだった。テスコは市からショッピングセンター用地を購入したが、その際の契約で、テスコが、市が所有し続ける土地も含めて、固定費で土壌改良することが定められた。 Foleshillガス工場跡地、すなわちアリーナ用地に対する総投資額は、245.4百万ポンドにのぼる。市はその最大の部分、リコ

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