欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査2008報告書
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CASE 4; RICOH Arena, (Coventry, England), ver.5 p.16 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved 2000~2001年頃、マスタープランが策定された。プランは、ショッピングセンターとリコー・アリーナを建設すること、そこにバンケット、展示会、カンファレンス、カジノ、ホテルを設置することにしていた。市の北部に大型のショッピングセンターが必要なことはすでに、市の開発計画(the Coventry Development Plan)に盛り込まれていた。市内の展示会やカンファレンス施設も不足していた。 計画段階で、ショッピングセンターが実行可能と見なされていた一方、ビジネスや展示会の施設は経営可能なのか、どんな規模なのか、または必要なのか等と、疑問視されていた。市とAWMは、市の北部開発の研究を深め、提案を作成した。研究の一部は次の通り。 North of Coventry Regeneration Study: Final Report DTZ Pieda & Scott Wilson May 1998CoventryCityFootballClubProjectA2 GCA Grimley May 2000Gasworks; An Initial Draft Report to Advantage West Midlands Eco tech Jun 2002Pre Evaluation draft paper: The Regeneration of Northern Coventry Research & Strategy CCC. Jan 2003また多くの研究が、カンファレンス、展示会、コンサートの需要、並びにスタジアム内のカジノ、貸しオフィス、ホテルの可能性について、見解を述べた。開発が環境に与える影響についても、多くの研究が行われた。 [出資者の募集] コベントリー・シティFCは1996年、ガス工場跡地にスタジアムを建設する計画を示した。かなりの初期費用を拠出し、また専門知識をもってコンセプト作りに取り組んでいた。後日プロジェクトが進行した際、クラブは取得していた株式をヒッグスチャリティに譲渡した。同基金は、社会や経済の再生を目的としており、ガス工場跡地の再開発とこれに伴う雇用創出は、その目的にかなうものだった。 しかしコベントリー市こそが、リコー・アリーナ建設における、最重要の推進者で、最重要の投資者だった。市は、建築工事やプロジェクト管理全体を、監督した。そしてそれが可能になったのは、テスコ社が土地を購入し、公共セクターの資金援助なしでショッピングセンターを開発したからだ。 AWMは補助金4.8百万ポンド提供し、ガス工場の土地購入をサポートした。この投資は、AWMによる、地域再開発への関与を示すものである。さらにAWMは2006年、補助金0.475百万ポンド提供しているが、これはリコー・アリーナ内にコミュニティ施設をつくることへの支援だった。 ガス工場跡地開発事業は審査を受け、ERDFの補助金4.75百万ポンドを得た。評価されたのはリコー・アリーナ建設のうち、展示場とカンファレンス施設、並びにバス発着場、駅、地下道をつくる事業。他方、スタジアムやショップの建設は、補助の対象にならなかった。 これらの出資者たちが開発事業に求めた成果は、次の通り。 コベントリー・シティFC ・ サッカー・スタジアム ヒッグスチャリティ ・ 新規雇用、地域の社会的再生 コベントリー市 ・ ガス工場跡地の再開発 ・ スタジアム、カンファレンス、展示場、バンケット、ホテル、コミュニティ、フィットネス、カジノ、貸しオフィスを包含する、象徴的な建築物 ・ 3,400以上のフルタイムまたはパートタイムの新規雇用。可能な限り地域の人々に提供されること ・ 市のイメージ向上 ・ 市の北部地域への投資と再生を促進 ・ ショッピングセンターの建設 ・ コミュニティ施設と公共図書館 ・ 地域カジノの認可

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