欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査2008報告書
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(24.1百万ポンド)で購入した土地を、134.4億円(60.9百万ポンド)で民間に転売することで、建設資金調達に大きく貢献した(集計上、実質的な資金負担元である民間資金として計算している。) 第二に、都市開発事業の一部としてスタジアムが建設された場合、自治体からの投資は、スタジアムよりも、都市開発により多く振り向けられる。リーボック・スタジアム、アムステルダム・アレナ、リコー・アリーナが、この例に相当する。いずれも、スタジアム建設と都市開発が相互作用を及ぼすことで事業全体が成立する、一体性の強いプランニングがなされている。 第三に、土地の確保と提供において、市が大きな貢献をしている。 スタジアム建設に必要な、広大で好立地な用地は、公共セクターからの提供が不可欠であろう。またスタジアムを中心とする施設では、用地取得費までを含む事業スキームが成立しがたいものと思われる。 今回調査した多くの事例で、市は施設管理者に対し、市有地を実質無償で貸与している。 図 3:リーボック・スタジアム 6 民間資金と借入金 公民共同の4事例で、建設費における民間資金の割合は16~61%3を占める。 民間からの資金は、スタジアム建設のため設立される会社への出資金として調達す 欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査Ver. 9 p. 6 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved 3 12~150億円 る例が多い。アムステルダム・アレナでは、こういった出資と、クラブの年間シート購入権をセットにして、資金を募った。アヤックスという人気クラブの存在を活用した、ユニークな手法だ。これらの出資者は、株価上昇によるキャピタルゲインを期待するよりも、地域の文化へ貢献する意識が強いものと思われる。 公的補助金、民間資金に並んで、資金調達の柱になっているのが、金融機関からの借入金で、各事例の建設費の19~68%4を占める。借入金は15~20年の長期ローンで、施設管理事業者にとって、毎年の収益の中から返済していくべきものとなる。逆の言い方をすれば、施設管理事業は、15~20年間にわたって、この返済負荷に耐えうるビジネスとして設計されている。 では各事例の施設管理業者は、どのようにして収益をあげようとしているのだろうか。 図 4:アムステルダム・アレナ (手前は併設されたショッピングセンター) 7 管理事業のスキーム MSVアレナ、フィリップス・シュタディオン、およびリーボック・スタジアムは、プロサッカークラブまたはその関連会社が施設管理業者となっている。すなわち100%民間事業で、業績はクラブの決算に、 4 41~56億円

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